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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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よりそう

 男は仕事で疲れていた。

 だから、帰りの電車の中で、寝てしまうことも多い。

 その日もそうだった。いつものことだ。

 なにせ電車の揺れ心地よく、そして暖かく眠りにいざなっているかのようだからだ。


 男が電車の座席に座り揺られながら、いつものように寝ているとふと右肩に重みを感じて目を覚ます。

 すぐに男は誰かが自分と同じように眠りこけ、自分に寄りかかって来たのだとわかる。


 わかったのだが、少しおかしい、妙な、まるで磯のような生臭さがしてくるのだ。

 流石に人の体臭とは思えないほどきつい生臭さだ。

 寄りかかられるのは多少は良いが、この臭いは流石に耐えられない。

 それほどの生臭さがある。


 男は完全に眼を覚まし、右肩に寄りかかっているものを見る。

 そして、驚く。


 それは砂だ。

 砂浜の砂、それも南国のような綺麗な砂ではなく黒い砂だ。

 それが人型のような形を取り、自分に寄りかかっているのだ。


 男は流石に悲鳴を上げようとするが、声が出ない。

 それどころか、右側を、その砂でできた人型のなにかを見たときから、体がまるで言うことを聞かないように動かない。


 もちろん、磯のような強烈な生臭さはその砂の人型からに寄ってきている。

 何なら、その砂はかなり湿っているらしく、男の右肩に、何かの水、海水のような物が沁み込んで来ている。

 男も流石にパニックになる。

 だが、どういう訳か、男はまるで体を動かすことが出来ない。

 ここで男は助けを求めるように何とか動く視線だけで周りを見る。


 普通の電車内だ。


 普通に客が電車に乗っている。

 ほんとどの者はスマホを見ているか寝ているかだが、中には話しをしている者もいるし、おかしなことはない。


 自分の、男の右隣だけか異様なのだ。


 それに周りの者達はまるで気づいていない。

 声を出せない男にとっては、助けの呼びようがない。

 男はパニックった頭の中で考える。

 今起きていることはなんなのだと。


 砂でできた人型。異様に生臭い。磯のような臭いだ。

 砂はかなり湿っている。恐らく海水で湿っている。だから磯臭い。

 だが、砂なのに磯臭い?

 砂浜はここまで磯臭くないはずだ。


 と、男が、そんなどうでもいいことを思った時だ。


 自分によりかかっていた砂の人が突如として崩れ出す。

 ボロボロと崩れて行き、崩れた砂は後にも残らず消えていく。


 そして、全ての砂が崩れ去った瞬間、男はハッと目を覚ます。


 そこはいつもの電車の中だ。

 自分は寝ていて夢を見ていたのだと、改めてそう思う。


 だが、男の服、その右肩には何かに濡れたような染みが出来ていて物凄く生臭くなっていた。


 ただ、それだけの話だ。





 

よりそう【完】

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