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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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へやのなかのむし

 いつの頃だろうか、家の中に虫が湧くようになっていた。

 古い家だから、と家主は思っていたが、不思議なことに湧く虫は地虫ばかりなのだ。

 何の幼虫かはわからないが、気が付くと土を掘り返さなければ会えないような地虫が床を這っている。


 はじめこそテッシュで優しく捕まえて外に逃がしてやっていたが、あまりにも多いので、掃除機で吸い込んだり潰して殺してしまったりするようになっていた。


 どこから湧いてくるのか、家主の男も気になってはいたが、その場所を特定することはできない。

 そもそも地虫、幼虫なのだ。

 それほど移動できるわけもない。

 なのに、朝には丸々と太った地虫がいる。

 床を元気に這いまわっている。

 それほど大きな幼虫ではないので、カブトムシなどではないことはわかるが、何の幼虫なのかもわからない。


 家主の男はあまりにも幼虫が出てくるので、もしかしてシロアリなのではと考え、業者に家を診てもらいもした。

 だが、とりあえずシロアリではない、という話だ。

 その業者に幼虫を見せたが、恐らくはコガネムシの物だ、という話だ。

 それ以上のことはわからなかった。


 家主の男はとりあえず家の中の鉢植えなどをすべて外に出してみた。

 それでも朝には幼虫が家の床を這っている。


 そんなことが続いていた。


 ある日、家主の男は仕事が終わらず家に持って帰ってきていた。

 二階の自室では妻が寝ているので、男は一階の広間で、ノートパソコンを広げ深夜まで仕事をしていた。

 その広間は一番地虫が多く出る場所だ。

 

 深夜一時になろうという時刻だろうか。

 ふいに、ポツ、ポツと何かが落ちる音がする。


 家主の男が床に目をやると、地虫が這っている。

 またポツ、ポツと落ちる音がする。


 男が顔を上げ天井を見る。


 男はそれを見てギョッとする。


 天井に人間のような、腐葉土の塊のような、そんなものが張り付いていた。

 腐った葉っぱの塊が人の形をしている。

 ちゃんと目と口の部分には穴があり、そこから地虫がたまに落ちてきている。


 そのわけの合わらない存在は男を見ているわけでもなく、動くわけでもなく、ただ天井に張り付いてじっとしている。

 

 男はすぐに二階に逃げ帰り、妻を起こして再び一階の広間に戻るとその存在はすでに消えていた。

 それから家主の男は家族に地虫が良く出る部屋には夜はいらないようにと言い聞かせた。


 そして、床を這う地虫は殺さずに、再び外に逃がしてやるようになった。




へやのなかのむし【完】

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