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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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けむくじゃら

 少女は窓を見ていた。

 雨の降る夕方、茫然と窓を見ていたのだ。

 そうすると、その窓を外から覗きこむ存在が現れた。


 黒い毛むくじゃらの何かだ。

 人型のようだが人ではない、なにかだ。


 それは窓越しに少女と目が合う。

 それだけで何もしてこない。

 少女は驚きはしたが、その存在がなにかを考える。


 少し大きめの黒い犬。

 熊。

 それらに類似するような野生動物。


 とはいえ、少女が住む場所は野良犬もいないような都会だ。

 そんな野生動物がいるわけはない。

 流石に熊がいるような環境ではない。


 それにそれは人型の様に少女には思えた。

 では、浮浪者か何かか。

 だが、そう言われると人ではない。

 少女もそれだけは一目見てわかった。


 窓越しにいる存在は人ではない何かだと。


 では何か、そう言われると少女には判断つかない。

 黄色く室内の電気を反射している瞳が少女を見ている。


 少女はとりあえず野生動物の何かだと、そう結論づけた。

 それにしては、かなり大きい。

 人間の子供くらいはありそうな大きさだ。


 そうなると熊くらいしか、少女も思い当たらない。

 ただ熊か? と言われると、やはり少女には確証は持てない。


 少女は何にせよ、このままでは危険と判断し、イヤホンで聞いていた音楽を部屋のスピーカーに繋ぎ大音量でならす。

 掻きならされるギター、響くドラムとベースの重低音。

 叫び声とも取れる奇怪なシャウト。


 それらの激しいビートがスピーカーから大音量で鳴る。


 そうすると、その毛むくじゃらは驚いたように、逃げるように、去って行った。


 少女は勝った、と確信して、毛むくじゃらがいないことを確信してから、窓を開け雨戸を閉めた。

 少女はその話を親や友人に話すのだが、誰一人として信じてはくれなかった。

 それでも少女のちょっとした武勇伝にはなった。






けむくじゃら【完】

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