こんびに
男は深夜のコンビニにやって来ていた。
バイトの帰りで、終電で何とか帰ってこれたような時間だった。
バイトにしてはキツイが、実入りがいいので男はそのバイトを続けていた。
怪しいバイトではなく倉庫の仕事で、言われた商品を見つけ出して持ってくるだけのバイトだ。
ただとにかく量が多く休む暇もない。
まあ、バイトの内容はどうでもいい。
男は疲れ果てて、家に帰る前に夜ご飯を買うためにコンビニに寄って来たのだ。
田舎で駅前でも暗い、そんな場所で煌々と明るく輝くコンビニにだ。
ただもうすぐ日が変わろうという時間だ。
男がコンビニ入ると、慌てて店員がレジにやって来た。
店員は少し、いや、かなり挙動不審だ。
男をチラチラと見て、オドオドしている。
ただ疲れている男は、それに対して何とも思わない。
考える余裕がない。
とりあえず飲み物を取る。
炭酸で甘い奴だ。
疲れていて糖分が欲しかったからだ。
その後弁当のコーナーへ行くが、もうほとんどない。
その中で一番カロリーが高そうなのを選ぶ。
どうせ疲れすぎてて、なんでも旨く感じれる。
なら、カロリーが高い方がいい。
明日もバイトはあるのだから。
それと、お菓子を数点を籠に入れ、レジに向かう。
商品を持って男がレジに来ると、店員は安心したように、最初にオドオドしていたのが嘘のように、明るい笑顔で対応してくれる。
男は、それが気にかかるが、まあ、こんな時間だし、と、自分の頭の中だけで自己解決する。
男が支払いを終え、商品を受け取った時だ。
コンビニの自動ドアが開き、店内にチャイムが鳴り響く。
そうするとコンビニの店員は、明らかに動揺し始める。
男が何だと思い、入口の方を向く。
そこには誰もいなかった。
男は、ただの誤作動か、そう思い商品を持ってコンビニを出ようとした、その時だ。
何かとすれ違う。
冷たい空気の塊。
何も見えない。
妙に生臭くしめじめとしている。
そんななにかとすれ違ったのだ。
ふと、男が振り返ると、コンビニ店員の顔が恐怖で引きつっていた。
だが、男はただの客だ。
何もできることはない。
男は急いでコンビニを出て、自宅へと向かう。
そして、夜はあのコンビニを使うのを止めよう、と、なんとなく思うのだ。
こんびに【完】




