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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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こい

 男は恋をしていた。

 誰に?

 誰にだろうか、それは男にもわからない。


 だが、男は恋焦がれていたのだ。

 米櫃の中の女に。


 男は仕事の関係上、祖父から受け継いだ家に一人で住んでいた。

 仕事の関係上と言っても、男の仕事場が当時誰も住んでいなかった祖父の家から近かっただけの事だが。


 まあ、そんな理由からだ。


 ただ、一人で住むには少し大きい、そんな家だ。

 その家には、米櫃がある。

 システムキッチンの一部として備え付けられているもので、それなりに大きいものだ。

 その米櫃に外から米の量がどれだけ残っているかわかる、長細い小窓があるのだが、そこから米が減ると見えるのだ。


 何とも美しい女の顔が。

 その顔は非常に生々しく、まるで生きている女が米櫃の中にいるかのように思えるほどだ。


 男も初めは驚いた。

 そして、米櫃の蓋を外して上から覗き込む。

 だが、米櫃の中には米しかない。

 当たり前のことだ。

 蓋を閉じて、横の小窓から見ると、美しい女の顔が見え、そして、その顔は男に微笑むのだ。


 怖いと思いながらも男はその米櫃の女に魅了される。

 男は次第に米櫃の小窓を覗き込む時間が増えていく。


 ある日、男が務めていた会社に男が来なくなる。

 そして、そのまま数日が過ぎた。


 会社から近かったのもあり。会社の人達数人で男の家まで様子を見に行くこととなった。

 玄関の戸は閉まっており開かない。

 電話をかけても出ないし、チャイムをいくら鳴らしても男が出て来る気配はない。


 そこで、会社の人達は男の親に連絡し、男が住んでいる家まで来てもらう。

 その後、男が住んでいる家に入るのだが、玄関の戸を開けたその時、妙な臭いと気配が家の中から漂って来たそうだ。


 そして、第一発見者の男の母親は会社の人達にお茶でも出そうと、台所で言ったところで男を、母親からしたら息子を、発見する。


 裸で米櫃に入ろうとして入れなくて、そのまま死んでいる男の姿を。


 その後すぐに警察に通報され、現場検証なども行われたが、事件性はない、と判断された。


 だが、残された者達には、なぜ男が米櫃に入ろうとしたのか、まるで理解が出来なかったという。

 ついでに、その米櫃はシステムキッチンごと新しいものに取り換えられたそうだ。





こい【完】

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