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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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さむいひ

 その日は物凄く寒かった。

 家の中にいるのに凍えるような、そんな寒さの日だった。

 室内なのに手が凍えてくる。吐く息が白い。それほどまでに寒かった。


 女はいくらなんでも寒すぎだろうと、エアコンをつけて暖を取ろうとする。

 だが、エアコンから吐き出される風さえも冷たい。

 女がエアコンの設定を確認するがちゃんと暖房になっている。


 なのに、凍てつくかのような風がエアコンから流れて来る。


 女は部屋の中で外用の上着を何枚も着こみ、何とかその寒気に対抗しようとする。

 だが、その寒さは女の想像を超えていた。

 まるで真冬の吹雪の中にいるかのような寒さなのだ。


 女はこのままでは凍えて死んでしまう、そう判断する。

 部屋の中でもこの寒さなのだ。

 外はどれだけ寒いのだろう、そんなことを考える。

 それを確かめる余裕は女にはない。


 女の住んでいるこの部屋には暖房器具はエアコンしかない。

 今まではそれで困ることはなかったのだ。

 だが、そのエアコンも今はまるで役に立たない。


 女は家でやっている仕事を一端やめて、本格的に暖を取ろうとする。

 これ以上は命にかかわりそうだと、そう思えるほどの寒さだったからだ。

 色々と考えた女はガスコンロに日を付けてヤカンで湯を沸かしながら、それに手をかざす。


 流石に温かさを感じることが出来る。

 沸いた湯でお茶れも入れて飲めば、更に温かくなる。

 そんなことを女が考えていた矢先だ。


 ガスコンロの火が消える。

 そのままガスは出るのだが、いくら点火しても火が付かなくなる。

 女はならばと、給湯器のお湯を使おうとするが、給湯器すらもすぐに機能しなくなった。


 女には何が起きているかまるで理解できない。

 こんなことなら、瞬間湯沸かしポットを買っておくべきだったと後悔をする。

 そして、女は行動に起こす。

 今から瞬間湯沸かしポットを買いに行くのだと。

 なぜ、女がそんな思考に至ったのか、それはわからない。

 ただ、女も色々と限界が近かったのかもしれない。

 部屋の中で凍え死ぬかもしれない、そんな環境が女にそう判断させたのかもしれない。


 女が意を決して、部屋の外に出た瞬間だ。

 女は感じる。

 暖かさを。

 外の気温の暖かさを。


 その暖かさは何枚も着込んだ外着を汗をかきながら脱ぐほどだ。

 いや、そうではない。

 これが普通の寒さだ。

 部屋の中が寒すぎたのだ。


 それを確かめるために女が自分の部屋の中へ戻る。

 だが、女の部屋は普段通りの、いつも通りの室温になっていた。


 あの異常なまでの寒気は、もうどこにもなかった。

 ただ、部屋の中に温度を最大にしてしまったエアコンが唸るように稼働しているだけだった。





 

さむいひ【完】

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