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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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じょなさん

 子供達の間で『ジョナサン』という噂話が流行っている。

『ジョナさん』なのか『ジョナサン』なのかはわからない。


 ただ子供達の間でそんな名の妖怪のような物が流行っている。

 子供達の話ではそれを見たら呪われて死ぬらしい。

 それは黒い真っ黒な女性らしい。

 黄昏時に夕闇の中に潜んでいるらしい。

 夕日に追われ伸びる影のように、それも背が伸びるらしい。

 走ってもすぐに追いつかれるほど足が速いらしい。

 それから助かるには夕日がまだ届く場所に逃げないとダメらしい。

 それで助かっても結局は呪いで死ぬらしい。

 呪いを解く方法はあるが、それは伝わってないらしい。


 そんな噂だ。そんな与太話が子供達の間で流行っていた。


 男が息子からそんな話を聞いた日だ。

 夕方、買い物から帰るとき、男はそれを見る。

 黒い女性だ。

 肌が黒いのではない。

 それは影だ。

 影が女の形を取っているのだ。

 それが夕闇の中に佇んでいる。


 なぜ夕闇の中に影の女性が、それが女性と認識できたのか。

 それは男にもわからない。

 だが、男にもそれがジョナさんだとすぐに理解できた。

 男は本当にそんな物がいるのかと感心する。


 男に余裕があったのは自分が夕日の中にいたからだ。


 ただ噂通りなら、自分はこのあと呪われて死ぬことになるはずだ。

 大人である男はそんな物は信じない。

 目の前に、理不尽な存在がいると言うのに、影の女性が佇んていると言うのに。

 男は、自分が死ぬだとは少しも思わなかった。


 ただ噂通り、ジョナさんは夕日が届く範囲にはやってこない。

 ただ夕闇の中で恨めしそうに佇んでいる。

 そして、噂通り影が伸びるようにジョナさんの背丈もどんどん伸びていく。


 男は珍しい物を見た。

 そんなことを考えて、一応、夕日が届く場所だけを通って家に帰った。

 その為、ジョナさんも男の後を追っては来れなかった。

 家に無事帰った男は、息子にジョナサンを見たことを伝える。


 伝えられた男の息子は、お父さんが死んでしまうと泣くのだが、男が死ぬことはなかった。


 男は呪われることはなかったのか、そもそも、ただの噂なのか、それはわからない。

 ただ、男は呪いで死ぬことはなかった。





じょなさん【完】

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