あまどのおと
雨戸が風でガタンガタンと鳴る。
それほど強い風が吹いているわけではないのだが、それでも、誰かが揺らしているようにガタンガタンと大きく鳴る。
少女はその音が嫌いだった。
まるで誰かが雨戸を開けようとしてるかのような、そんな気がしていたからだ。
その夜もガタンガタンと雨戸が大きな音を立てて鳴る。
それほど強い風が吹いているわけではないのに、雨戸が音を立てる。
少女は布団の中で、その音を嫌がりながら、眠りにつこうとする。
だが、その夜はなぜか雨戸の音が気になる。とても気になって寝られない。
ガタンガタン、ガタガタガタと、そんな音が少女の部屋に響く。
電気の消えた部屋で少女は布団の中に寝ながら、雨戸の方を見る。
カーテンも閉められているので、雨戸を見ることはできない。
けれども、少女が雨戸の方に視線を送っている間は、雨戸の音はなぜかならない。
少女が視線を外し、目を閉じて眠ろうとすると、再び、雨戸はガタンガタンと鳴り出すのだ。
そして、少女が視線を送ると音は鳴りやむのだ。
そんなことが数回起きる。
少女も流石におかしいと思うようになる。
なので、少女は布団から起きて、部屋の電気を着ける。
そのとたん、ガタン、と大きな音を立てて一度だけ雨戸が大きく揺れる。
少女が急いでカーテンを開ける。
そうすると、雨戸が歪んでいる。
まるで誰かが無理やりこじ開けようとしたかのように、酷く歪んでいる。
それを見た少女は親を呼びに行く。
その日は父親と部屋を代わり、少女は親の寝室で母親と寝る。
父親が少女の部屋で寝たが、雨戸の音が鳴ることはなかった。
ただ、次の日、少女の部屋の雨戸の前に、長く太く鋭い、針のような獣の毛が何本も落ちていた。
熊というよりもヤマアラシの針のような毛がだ。
少女と父親はその毛を色々と調べてみたが、どの動物の毛か、まるで分らなかった。
ただ、少女の部屋の雨戸の音はそれ以来、鳴らなくはなった。
あまどのおと【完】




