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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ついてくる

 少女は深夜遅くに、尿意を催して起きる。

 寝る前に母親の言うことを聞かずにジュースを大量に飲んでしまったせいだ。


 だが、用を足すこと自体は問題なかった。


 トイレの戸を開けたとき、少女は異変に気付く。

 つけておいたはずの廊下の電気が消えているのだ。


 少女は茫然とする。

 廊下の電気はつけておいたはずなのだ。

 少なくともトイレに入るまでは電気はついていたはずだ。

 間違って消してしまったかと思ったが、そもそもトイレがある場所には廊下の電気のスイッチはない。

 少女が電気を消すことはないのだ。


 だが、今は廊下の電気が消えている。


 自分の部屋まではこの暗い廊下を歩かなばならない。

 途中に、ちょうどトイレと自分の部屋の中間あたりに、電気のツイッチはあるが、つけたら消さなければならない。

 不気味だと、そう思いながらも少女は色々と考える。


 トイレの電気はついている。

 その明かりを頼りに廊下の電気をつける。

 その後にトイレの電気を消して、自分の部屋まで戻る。

 この際だ。廊下の電気には一晩中つていてもらおうと、少女は考える。


 そうして、少女がトイレから廊下に出る。

 トイレのドアを開け、そこから漏れ出る明かりを頼りに、暗い廊下を進む。

 とはいえ、家の廊下だ。

 それほど長い廊下なわけでもない。

 数歩歩けば、廊下の中央にたどり着き、そこに廊下の電気のスイッチもある。


 と、少女がそんな事を考えていた時であり、トイレから出て数歩歩いた時だ。

 バタン、と音がしてトイレの戸が勝手に閉じる。

 それどころか、パチンと音が聞こえ、丁寧にトイレの電気まで消される。


 少女は完全い暗闇に包まれた廊下の中で恐怖から硬直する。


 誰かいる。

 トイレの戸を閉め、電気を消す。恐らく廊下の電気も消した、なにかが廊下にいる。

 そのことに少女は気づいた。


 なんなら、少女は視線を感じる。

 それがなんなのか、少女にはわからないが、それは自分を見ているのだと、少女には理解できた。

 そして、それはなんなのか、少女にはまるで理解できないのだが、それは少女の真後ろにいる。

 わずかな息遣いを、自分のものではない息遣いを、少女は感じ取る。


 悲鳴を上げるのを少女は必死に堪えた。

 今ここで大きな声を上げたら、自分がどんな目にあわされるか、なんとなく少女は直感で理解しているからだ。

 もし悲鳴を上げたら自分は間違いなく後ろにいる何かに殺される。

 そう、少女は直感で理解していた。

 それが真実かどうか、そんなことはどうでもいい。

 少女がそうだと、確信してしまっているのだから。


 少女はゆっくりと廊下を前方へと、自分の部屋へと歩む。

 少女の後を、なにものかがヒタ、ヒタとついてくる。

 少女が数歩歩くと、廊下の電気のスイッチの場所までやってくる。

 電気を着けるかどうか少女は迷う。


 だが、わざわざ電気を消して回る様な何かだ。

 下手に刺激を与えないほうが良いと少女は考え、廊下の電気をつけずに、そのままゆっくりと自分の部屋を目指す。

 そして、それは少女についてくる。

 電気をつけなかったのが良かったのか、特に少女に何かをするわけでもない。

 ただ少女の後をついてくるだけだ。


 それがなんなのか、少女にはわからないが、確かに少女の真後ろに存在し、それは少女の後をつけてきていることだけは事実だ。

 少女は泣きそうになるのを何とか我慢し、自分の部屋の前まで来て、一気に動く。

 勢い良くドアを開け、自分の部屋に入り、急いでドアを閉める。


 そすると、ドンドンとドアを二、三度叩く音がする。

 少女はドアの鍵を閉め、自分の部屋の電気もつける。


 そして、自分の部屋を見渡す。

 自分の部屋だ。

 誰もいない。自分以外誰もいない。

 そのことに少女は安心し、ドアの向こうの気配を探る。

 もう何者の気配もない。


 少女は涙ながらに、部屋の電気を着けたまま自分のベッドに潜り込む。

 その瞬間だ。

 パチンと音がして、少女の部屋の電気が消えたのだ。


 少女は朝まで布団の中で震えていた。





ついてくる【完】

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