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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ごみばこ

 男はずぼらだった。

 だからというわけではないが、部屋が汚い。

 男の部屋のその辺にゴミが散らかっている。


 とてもじゃないが男の部屋に人は呼べない、男もそれだけの常識は持ち合わせていた。

 男には当時付き合っていた女がいた。

 その女から、部屋を掃除しなくては別れる、と、まで言われたので、男も嫌々ながら掃除をし始めた。


 そこらじゅうに落ちているゴミを片っ端からゴミ箱に突っ込んでいく。

 そうして、半日ほどたつと部屋が、綺麗とは言い難いが、ゴミが散らかっているようなことはなくなった。


 そこで初めて男は気づく。

 ゴミ箱のゴミを一度も捨ててないと。


 ただのゴミ箱だ。

 缶からの鉄の、ただのよくあるゴミ箱だ。


 部屋中のゴミを入れられるだけの容量などあるわけがない。

 なのに、部屋が片付いている。

 ゴミのほとんどがゴミ箱の中に納まったのだ。


 流石に男もおかしいことに気づく。

 男はゴミ箱を覗き込む。

 ゴミが詰まっている。先ほど捨てたゴミだ。

 コンビニ弁当をまとめて入れたビニール袋だ。

 ゴミの仕分けも何もあったものじゃない。


 男はとりあえずそのビニール袋をゴミ箱から取り出す。

 そうすると、ゴミ箱は空になっていた。


 男は目が点になる。


 そして、取り出したビニール袋をゴミ箱に戻す。

 そうするとビニール袋はゴミ箱の底に吸い込まれるように消えていった。


 訳が分からないが、これは便利なゴミ箱だと、男は理解する。

 このゴミ箱がなければ、部屋の掃除もここまで早く終わらなったことだろう。


 不思議だが、これは良い物を手に入れたと、男はゴミ箱を部屋の中央に置いた。

 そして、朝から何も食べていなかったことに気づき、昼食を作る。


 たしかにゴミのない台所はいいものだ。

 まず嫌な臭いがしない。

 生ごみが出ても、あのゴミ箱に捨てればすぐになくなる。

 非常に便利だ。

 男はそんなことを考えて昼食を作る。

 そして、部屋の、先ほどまでゴミに埋まっていて使えなかった、テーブルまで作った昼食を持っていく。


 その時だ。男は何柔らかいものを踏む。

 なんだ、と思って下を向くと、自分の足がゴミ箱に入っている。

 こんなところに置いた覚えはないのだが、と男が思っていると、男の意識は途絶える。


 その後、その男のことを見た者はいない。

 ただ、男の部屋には作ったばかりの昼食が床にぶちまけられていただけだ。





ごみばこ【完】

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