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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ふゆのとおらい

 朝、少年は目覚める。

 まだ起きるには早い時間だ。

 その証拠に、目覚まし時計は鳴っていない。


 窓からは淡い光が差し込んできている。

 光の具合からもまだ早朝だと分かる。


 起きなきゃいけない時間までにまだ一、二時間くらいはあるかもしれない。

 そんな時間だ。


 そんな時間に少年が起きたのは部屋がやけに冷え込んで来ていたからだ。

 空気が冷たい。

 鼻で息をすると、冷たい空気が鼻孔に入り込み、軽い痛みを感じるほどだ。


 少年はもう完全に冬だ、と、そう思って布団を頭からかぶる。

 もう少し寝ていたい。

 そして、そう思ってだ。


 だが、寒い。

 寒すぎる。

 今使っている布団も別に薄いわけじゃない。

 なのに、空気が冷たすぎる。

 まるで凍てつくかのような、そんな冷たさだ。


 布団の中で丸まっていてもブルブルと震えるような寒さだ。

 真冬でもここまで寒いことはない。

 寒い? いや、もはや冷たい、という感覚の方が強い。


 少年はいくら何でもおかしいし、このままでは凍えると思い、布団の中から手を伸ばす。

 そして、エアコンのリモコンを手探りで探す。

 ここまで寒いのなら、暖房をつけても文句は言われない、そう思ってだ。


 だが、その手がリモコンを探し当てることはない。

 その代わりに、氷の様に冷たい何かに触れる。


 少年の背筋が、体の芯が、一瞬にして冷やされる様な、そんな感覚に完全に目が覚める。

 それは少しだけしっとりと湿っている。そして、氷の様に、刺すような冷たさを持っていた。

 少年はそれが何なのか理解できない。


 手を布団の中に戻した少年は顔を顰める。

 手から妙な生臭さを感じたからだ。

 強烈な生臭さではない。

 冷凍の生の魚から感じるような、そんな生臭さだ。


 少年は布団から顔をだし、手で触れたものの方を見る。

 そこには人がいた。

 髪の長い女だ。

 大きな丸い目を見開いた黒い髪の女だ。

 それが寒そうにブルブルと震えている。


 ただ、その震え方が尋常ではない。

 ゲームの中でバグったキャラがガクガクと高速で震えるような、そんな震え方なのだ。


 少年が悲鳴を上げる。


 そうするとその女は震えながら壁の中へと消えていった。

 少年の部屋には妙な生臭さと刺すような寒気だけが残っていた。


 時計を見ると午前五時前だった。

 ただ、それだけのことだ。





ふゆのとおらい【完】

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