さいれん
少年は夜に寝れずにいた。
もう深夜だ。
なのにベッドの上でゴロゴロとしてまるで寝れない。
そんな中、サイレンの音がする。
真夜中だと言うのに、サイレンの、救急車かパトカーかはわからなかったが、何かしらのサイレンを鳴らしている車の音が聞こえて来る。
ただでさえ寝付けないのに、サイレンの音で眠れる気がしない。
少年はぼぉーとしてその音を聞き続ける。
恐らくは消防車だ。
火事でも起きたのかもしれない。
遠くに聞こえていたサイレンの音は徐々に近づいてきている。
少年はそう思いつつもベッドの上で寝返りを打ち、サイレンの音から逃げるかのように布団を頭からかぶる。
それでもサイレンの音は聞こえてくる。
その上でサイレンの音もどんどん近づいてくる。
いや、もうすぐそこまで来ているように感じる。
少年も近所で火事でも起きたのかと、ベッドの上から身を起こす。
そして、通りの見える出窓を見る。
出窓の雨戸は閉めていない。
この出窓の雨戸を閉めるのは少々めんどくさい上に、少し立て付けが悪いのだ。
なので、ブラインドのみ降ろされている窓だ。
そんな出窓の前に少年が立った時だ。
本当に近くでサイレンが鳴っていることに気づく。
まさに自分のうちか隣か、そんな感じだ。
少年はブラインドの一つを下げて外を見る。
真っ暗な空と街灯に照らされた通りが見える。
それだけで何も変わりない普段の夜の景色だ。
だが、本当にすぐそこでサイレンが鳴っているように少年には思えた。
少年はブラインドをあげて、本格的に外の様子を探る。
緊急ランプの明かりでも見えないかと、探すがそれも見えない。
ただサイレンの音的には本当にすぐそこなのだ。
方向が違うのかもしれない。
少年はなにかもっと、サイレン以外の音が何か聞こえないかと、窓を少しだけ空けようとする。
その瞬間だ。
出窓のはずなのに急に横から手が、いや、腕自体が窓ガラスを叩くようにバンッと張り付いて来た。
そして、その腕は窓ガラスを開けようとしてくる。
少年は慌てて、窓を閉めて鍵をかけた。
そして、部屋の電気を着ける。
電気をつけた瞬間、その手は闇へと消えていった。
もう一度言うが、少年の部屋の窓は出窓であり、人が腕を回せるよな場所はない。
屋根も床も出窓の周りにはないのだ。
少年は慌ててブラインドを降ろし、電気を着けたまま、ブラインドを降ろした窓を朝まで見張り続けた。
ただ、気が付くといつの頃からかサイレンの音は消えていた。
もちろん、少年の家の近所で火事や事件が起こったことはない。
さいれん【完】




