どこにいるの
少女は学校からの帰り道に名前を呼ばれた。
名を呼ばれた方に行くのだが、誰もいない。
少女はしばらく周りを見回す。
やはり誰もいない。
けれども、確かに少女の名は呼ばれ続ける。
それでも、少女はまた名を呼ばれる方へと行くのだが、そこにも誰もいない。
そうしている間に少女はどんどんと帰り道からは外れていく。
そうこうしていると日が暮れ始める。
少女を呼ぶ声は暗い路地の奥から、まだ聞こえて来る。
夕日の光も届かない路地に少女はどことなく恐怖を感じはじめる。
本当に自分を呼ぶ者などいるのか?
そう言った疑問まで生まれてい来る。
呼ぶ声を無視して帰り道まで戻るか、それとも呼ばれた方へ行くか、少女は迷う。
そこで、少女は大きな声を出す。
どこにいるの、と。
自分を呼ぶ存在はどこにいるのかと、暗い路地に向かい大きな声でいるかいないかもわからない存在に問うたのだ。
そうすると少女を呼ぶ声がピタリと止まる。
その代わりに少女の立つ場所が暗くなる。
いつの間にかに少女の後ろに何者かが夕日を遮るように立っている。
少女はビクッとして恐怖を露わにする。
背筋にゾクっと冷たいものが走る。
夕日に照らされ伸びている影が人の形をしていない。
少女の後ろに立つものは、もう少女を呼ぶことはない。
だが、少女に何かするでもなく、ただ少女の後ろに佇んでいる。
少女はゆっくりと振り返る。
そこには一匹の猫がいた。
そして、少女が猫をみると、その猫は、なぁ~ぉ、と鳴き声を発しどこかへ去って行った。
ついでにだが、少女の名は奈央だ。
どこにいるの【完】




