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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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じむしょ

 それはお盆の時期の話だ。

 男は事務所で一人仕事をしていた。

 仕事のお盆休みでも、会社の事務所に一人はいなければならない。


 男のが所属している会社はいくつかの実店舗を持っているためだ。


 実店舗との連絡役として事務所に最低でも一人はいないといけない。

 それに、この会社はネット通販もしている。

 お盆休みでも注文は入ってくるのだ。


 それでもお盆休みは仕事が少ない。

 事務所にも男一人だけだ。

 事務所でゆったりと定時まで暇を潰していればいいだけで気楽ではある。


 だから、男はお盆休みの出社を自ら希望したのだ。


 一人の事務所で悠々と珈琲を飲みながら、仕事をする。

 とはいえ、それほど仕事が溜まっているわけでもないし、取引先も休みだ。

 午後前には仕事がなくなり、ただの連絡役となる。


 男はパソコンでネットをしながら時間を潰す。

 どうせ家でも同じことをやっているのだ。

 会社でも一人だけなら変わりない。

 それなのに給料も貰え、他の社員には感謝される。

 楽なものだと、そう考えていた。


 昼過ぎて少ししたくらいだろうか。

 事務所のチャイムが鳴る。

 男はこの時期に? と不振に思う。

 今はお盆休みだ。

 何かの営業があるわけはないし、取引先が訪ねて来ることもないはずなのだ。


 男は不思議に思いながらも事務所の玄関に行くが、そこには誰もいない。


 いたずらか? と思い、男は自分のものとは別のパソコンの電源を入れる。

 そのパソコンからは監視カメラの映像を確認できるからだ。


 サーバーに録画のデータも残っているはずなので確認する。


 そのデータを見た男は驚く。

 確かに黒い服のセールスマンのような男が事務所の玄関にいるのだ。

 しばらくすると、男がが事務所のドアを開ける映像が見える。

 そうすると、その黒い服のセールスマンは悠々と男の横から事務所に入り込んでいったのだ。


 男は冷や汗をかき始める。

 自分が事務所の玄関に行った時、誰もいなかったはずだと。

 では、この監視カメラの映像はなんだ。


 男は慌てて静まり返った事務所を見回す。

 誰もいない。


 男にあることが頭の中に過る。

 カメラには黒い服の男は映っていたのだと。


 そこで男は自分のスマホを持ち出し、カメラを起動させる。

 その瞬間、男はスマホを投げ捨て事務所から大慌てで逃げ出した。


 スマホの画面には映っていたのだ。

 スマホのカメラを覗き込むように間近にいる黒い服の、死んだような無表情なその顔が。





じむしょ【完】

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