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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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だれかいる

 女は恐怖していた。


 女はアパートの一室を借りて暮らしている独り暮らしだ。

 仕事に出ている間、部屋には誰も入れないはずだ。


 だが、仕事に出かけ、帰ってくると微妙に部屋が汚れている。

 何か物が盗まれたりした訳ではない、だが、誰かが自分の部屋を使ったような跡があるのだ。


 物の配置が少し変わっていたり、コップを使われていたり、と。


 はじめは勘違いかと思っていたが、試しに机の上にコップを置いて出かけ、帰ってくるとそのコップは使われて台所の流し台の中に置かれていたのだ。

 確かに、仕事に行く前には机の上にコップを置いて置いたはずなのだ。

 女は勘違いではない、と、それで確信する。


 そこでパソコンに接続できるカメラを買い、それを部屋に仕掛けておいた。

 パソコンもつけっぱなにして、パソコンのモニターの電源だけ落としておいた。

 カメラでアパートの部屋全体を、それこそ玄関まで映る場所に設置して、録画ボタンを押して女は仕事に行ったのだ。


 女は仕事から帰ってきて、カメラの録画を見る。

 昼過ぎくらいの時間だろうか、ガチャンと音がして女の部屋のドアが開く。


 そうすると黒い服を着た小太りの中年のおばさんがドカドカと部屋へ入り込んで来て、女の部屋でくつろぎだしたのだ。

 中年の女性は夕方ごろまで女の部屋でくつろぎ、何事もなかったように部屋を出ていった。


 やはり人が入り込んでいたのだ。

 女はすぐに大家に連絡する。


 次の日に大家が来て、女が撮った画像を確認する。

 大家も黒い中年女が部屋へあがり込む姿を見て、顔を顰める。

 その女は靴を脱ぐ素振りもなかったのだ。


 大家もその中年女性には見おぼえはないし、警察に連絡しよう、という話になった。

 そこで、ふと大家が録画の映像を見ていて気づく。

 あれ、なんかおかしくないか、と。

 女はどこがですか? と、声を荒げる。

 大家は恐る恐る答える。


 この黒い服の女性、影がなくないですか? と。


 女もそう言われて映像を見る。

 部屋でくつろいでいる中年女性には確かに影がない。

 他の、机やベッドにはちゃんと影があるのにも関わらず黒い服をきた中年女性だけに影がない。


 女と大家は、その場でゾワゾワとしたものを感じ始めた。

 大家は警察よりお祓いの方がいいかもしれない、と、女に進めた。

 女もそんな気がしてきたので、大家と共に近くの神社でお祓いをしてもらった。

 そして、その時に貰ったお札をドアに貼った。


 それ以降、カメラを付けていても、昼間に黒い服の女が部屋に入り込むことはなくなった。

 ただ、今もカメラを付けるとそこには映っている。

 誰もいない昼過ぎに、部屋の玄関のドアを開けようとして、揺らす様子だけが。





だれかいる【完】

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