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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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おわれる

 少女は追われていた。

 なにに?

 それがわからない。


 それは廊下にいた。

 学校の廊下だ。

 部活が終わり着替えるために教室に戻るとき、それは廊下の真ん中に立っていた黒い人影だ。


 変質者か、と言われれば、そうとも答えられるし、違うとも答えられる。

 少女にはその人影が人間には思えなかった。


 まるで人形のような。そういう物に思えた。

 ロボットダンスというダンスを知っているか?

 体の各部位が別々の動きを取る様な、そんな動き方をしているのだ。

 それは正にそんな奇妙な動きをしながら廊下に立っていたのだ。


 それが少女を発見するや否や、少女に近づいて来たのだ。


 少女には悪寒が走り、すぐに元来た道を走って引き返す。

 教室に荷物を置いたままだが、そんなことを言っている場合ではない。


 少女は力の限り走り、階段を駆け下り、近くのトイレへと駆け込んだ。

 そして、トイレの戸を閉めて、その中で、薄暗いトイレの個室の中で震える。


 少女がトイレの個室で震えていると、オーイ、オーイ、オーイ、と声が聞こえてくる。

 男女とも判断が付かない声が。

 どちらかというと、鳥の鳴き声に近い、そんな声が。


 しかも、その呼び声はだんだんと少女のいるトイレに近づいてくる。

 声の大きさから、声の主がトイレの中まで入って来たことを少女は感づく。

 少女は息を飲む。

 だが、締まっているトイレは少女が隠れているトイレだけだ。

 これではすぐに居場所がバレてしまう、そう少女が考えていると、オーイと呼ぶ声が聞こえなくなる。


 もしかして、見つからなかったのかと、少女が安心したときだ。

 トイレの上から、トイレを仕切っている壁と天井の間から、それは覗き込んで来ていた。


 それは人形だった。

 木製の人形に思える。

 人間大の木製の人形。

 それが薄暗いトイレで、壁の上から覗き込んで、いや、トイレの個室に入り込もうとして来ていたのだ。


 少女は悲鳴を上げ、震える手でトイレの鍵を外してトイレから逃げ出す。

 そのすぐ後に、ガシャンという音がして、人形が落ち、立ち上がり、奇妙な動きで少女を追いかけ、オーイ、オーイと少女に声を掛け続ける。


 少女は泣きながらも走る。

 暗くなった校舎の廊下を疾走する。

 そして、再び階段を駆け下りた先で、明かりのついている部屋を見つける。

 職員室だ。

 まだ教師なら職員室にいるはずだ。

 少女はなんとか職員室にたどり着き、ドアを乱暴に開いて、転がり込むように職員室に逃げ込んだ。


 数人の教師がまだ残っており、泣きながら駆け込んで来た少女に何事かと、集まってくる。

 少女は自分が体験したことを話すが、教師たちは困った顔をするだけだ。


 だが、教師も後になって気づいたことだが、職員室の入口まで、少女を追うようにまん丸い、直径三センチほどの足跡のようなものが点々とついていたのだ。

 それが職員室のすぐ近くから、少女の話したルート通り、最終的には非常口の階段まで続いていたという。

 それが何の足跡なのか、まったくの不明のままだ。





おわれる【完】

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