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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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おにわ

 少女の家には、そこそこ大きい庭がある。

 木が生え、敷石があり、ぐるりと家の周りを一周できる程度の。

 池などはないが、それなりに木が生い茂った庭だ。


 少女は晴れた日にその庭をぐるりと一周するのが好きだった。

 その日もそうだ。

 ただ、友人らと遊んでいたので、その日は既に夕方となってしまっていた。

 それでも家の庭だ。

 特に怖がるようなこともない。

 少女は庭を一周しようとする。


 茜色の空を見ながら暗くなった庭を一周する。

 敷石の上を歩き、普段はあまり見ることのない夕方の庭の様子を見る。

 木が生い茂っているせいか、想像以上に庭は暗い。

 夕日が庭にまで届くことはない。


 木と木の奥には普通に塀が見えるだけなのだが、その日は黒い闇しか見えない。


 その闇から、ふと人影が現れる。

 頭を左右に揺らして、ひょこひょこと歩く人影だ。

 ただ、黒いだけの本当に人影で、それが誰なのかよくわからない。


 少女は不気味なものを感じ、庭を引き返す。

 家の玄関に向けて走り出す。


 そうするとその人影も少女を追いかけるように走り出す。

 それを見た少女は全力で走るのだが、どこかおかしい。


 そこそこ大きいとはいえ、普通の家の庭だ。

 すぐに玄関にたどり着くはずだし、少なくともまだ明るい開けた場所にはすぐに出るはずなのだ。


 なのに、少女がいくら走っても暗く木々が生い茂る庭が続いている。

 家の壁が、窓も何もない家の壁だけが延々と続いている。


 ついに少女は泣きだし、脚を止めてしまう。

 そして、黒い人影が少女に迫ろうと、そうした時だ。

 どこからともなくガマガエルが、大きなガマガエルが、少女と人影の間に割って入る。


 一抱え程あるガマガエルは少女に背を向け人影の方を見る。

 この辺りに池などはない。庭にも水辺などはない。

 なので、蛙などいるわけはないのに、これほど大きく立派なガマガエルが急にどこからともなく現れたのだ。

 泣いていた少女もつい、その蛙に見とれてしまう。

 それ程立派なガマガエルだった。


 ただ黒い人影はそのガマガエルを怖がるように後ずさり、闇の中へと消えていった。

 そうするとそれを追うようにガマガエルも闇の中へ消えていった。


 少女が立ち上がり周りを見渡すと、そこはいつもの庭だ。

 少女はすぐに家の中に入る。


 そして、少女は両親に伝えるのだ。

 うちの庭には蛙の神様がいるのだと。

 少女の両親はよくわからなかったが、少女が嬉しそうなので笑顔でその話を聞いた。


 それ以来少女は蛙が好きになった。

 ただそれだけの話だ。






おにわ【完】

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