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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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さむい

 最近、急に冷えだした。

 男は震えながら夜道を急ぐ。

 早く家に帰りたいからではない。

 いや、もちろんそれもある。

 だが、今はそれ以上に寒かったからだ。

 だから、小走りをして体を動かし、体を温めていた。


 特に今日の夜は冷える。

 まるで真冬ではないか、とそう思えるほど寒い。

 鳥肌が立ち、ぶるぶると男が震えるほど寒い。


 空気が凍てつく様な、刺すような痛みを感じさせるほど寒い。


 男はもう一枚なにか羽織って来ればよかったと、そう思いつつも足を動かす。

 まるで立ち止まっていられない、そんな寒さだ。

 いくら何でもこんな寒さはおかしい、そう思えるほどの寒気、いや、冷気を男は感じていた。


 ふと男はガラス窓に目が留まる。

 ただのガラス窓だ。

 その窓から見える部屋は暗く明かりが付いていない。

 だから、ガラス窓に男の姿がうっすらと映って見えた。


 そこで男は気づく。

 白い靄のもうなものが自分の肩に縋りつくようにまとわりついているのに。


 男は慌てて肩を見る。

 何もない。

 ついでに手で肩のあたりを触ってみる。

 非常に冷たい空気がまとわりついているのがわかる。


 男は再び窓を見る。

 確かに白い靄のような物が、男に後ろから抱き着くようにまとわりついていた。


 実際には見えないが、窓硝子には確かに白い靄が映りこんでいる。


 男は冷静に考える。

 この白い靄はなにかと。

 わからない。

 幽霊的な何かとしか男には思えない。

 だから、物凄い寒気を感じていたのだろうと納得すらする。


 男は手でその靄を払うようにするが、払えている気はしないし、窓硝子には白い靄が映り込んだままだ。


 靄は靄だ。手では払えるような物ではないようだ。

 そこで男は走り出す。

 走って靄を振り切ろうというのではない。

 男には考えがあったのだ。


 男は走り閉店間際の大型の電器屋に駆け込む。

 そして、店内を見回し、扇風機のコーナーを探し出す。

 まだ扇風機が売られていることに男は喜び、そのコーナーまで行き、風量を最大にして扇風機の電源を着ける。

 強い風が男に吹きかけられる。


 それと共に冷たい気も風に押し流されていく。


 店の店員にはこの寒いのに扇風機に当たっている人として、奇異な目で見られたが、男にまとわりついた寒気はすべて流されていった。

 そうすると、確かに肌寒いが、寒すぎはしない、そんな気温だったのだと男は知ることが出来た。


 男は自分の家に扇風機があったかどうか考えるが、恐らくは家にはない。

 男はその電器屋で扇風機を、一番風が強く送れる扇風機を買って満足そうに帰って行った。


 ただ、その扇風機が活躍するのは半年以上も先、来年の夏になってからの事だ。





さむい【完】

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