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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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せまりくるあくむ

 Cは寝ていた。

 夢の内容は覚えてはいないが、なにかに追いかけられるような悪夢を見ていたはずだ。

 Cはまだまどろみの中にいる。

 ぼんやりとだが、何か怖い夢を見ていたのだと言うことだけは理解できた。


 そして、同時に寒気を感じる。


 恐らくは寝返りでもして布団がずれてしまったのだろう。

 布団を掛けなおそうとするがうまくいかない。


 思う通りに体が動かない。

 恐らくは半覚醒状態だからだろう。

 Cは寒いので早く布団にくるまりたいと考えてはいるのだが、意識そのものもまだはっきりしない。


 そんな中、布団が引きづられる。


 布団を掛けなおしたいのだけれども、掛布団が逆に脚の方へと引っ張られる。

 

 それはそれで異常事態なのだけれども、寝ぼけているCはそのことに気づかない。

 ただ寒いから布団を掛けなおしたい、そう思っているだけだ。


 寒さが増す。


 そのおかげでCもだいぶ覚醒できた。

 そこでやっと気づく。

 布団が何かに引っ張られていると。

 ただCは掛布団がベッドからずれ落ちているとまず考えた。


 なぜならCは一人暮らしだったし、今日は誰か客が泊まりに来ているわけでもない。

 C以外、この部屋に誰もいないのだから。

 

 意識もだいぶ覚醒してきて、腕を動かそうとしたときCは異変に気付く。

 腕が動かない。


 寝ぼけているからではない。


 そこで初めて、Cの頭の中に金縛りという言葉が過る。

 そして、掛布団が明確に引っ張られる。

 ずれ落ちているのではない。

 ベッドの下に何かがいて、布団伝いにベッドに登ろうとしているのだと、Cは感じた。

 

 その何かが確かにいる様に、布団が不自然に揺れる。

 それはもう布団にしがみ付きぶら下がっていて、すぐそこまで来ているのだとCはやっと気が付いた。

 

 何か行動を起こさなければ、とCは思うけれど、体が言うことを聞かない。

 ぶるぶると震えるだけで一向に動こうとしてくれない。

 声を出そうにも、気の抜けるような掠れ声しか出ない。

 足の辺りを何かが踏み抜く感触がする。

 何かが布団を伝ってとうとうベッドの上まで上がって来たのだ。

 それはCの体を避ける様に歩き、顔の方に近寄ってくる。


 Cは何とか動こうと、声を出そうと躍起になる。

 迫りくる何かがすぐそばまで来ているのがわかる。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そんな声を上げてCは跳ね起きる。

 Cは一通り暴れ、その後に電気を着ける。


 そこには何もない。

 いつも通りの自分の部屋と足の方にずり落ちた掛布団があるだけだ。


 辺りを見ますが他に変わったことはない。

 Cはとりあえず安心し、一息つく。


 その時だ。

 ドンドン! と二度ほど壁を叩く音がする。

 Cはビクッとするが、それが隣の部屋の住人が、先ほどCが真夜中にあげた奇声に対する抗議だったことに気づくのに少しばかり時間を要した。


 ただそれだけの話だ。





せまりくるあくむ【完】

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