こうていにいる
少女はその日、部活で遅くなっていた。
部活が終わり、着替えと荷物を取りに自分の教室へ向かっていた時間だ。
もう電気も消され真っ暗な校舎を進む。
教室について真っ暗な教室の中で少女はジャージから制服へと着替える。
電気もついてないので誰かに見られる心配もない。
少女はそんなことを考えながら、着替えを終え、荷物をまとめ教室を出ようとする。
その時に少女は気づく。
窓から見える校庭に何かが見えると。
校庭を照らすライトももう消えており真っ暗で誰もいない、はずだった。
なのに校庭にポツンと一人、白い服を着た人間が立っているのが見えた。
少女は誰だろうと、それの白い服の人間に目をやる。
だが、おかしい。
真っ暗な校庭でそんな物を見ることはできない。
まるで自ら発光でもしているかのように、それは白くくっきりと真っ暗な校庭に見ることが出来た。
全身青白い服だ。
少女のいる教室からはそれぐらいしかわからなかった。
けど、校庭にいたそれも少女の方を見る。
少女はそれと目が合った、そんな感覚を得る。
だけれども、少女がいる場所は校舎であり、たくさんある三階の教室の一つだ。
しかも、今は暗く電気もつけていない。
外から見て、少女が見えるわけはないのだ。
それは少女の方を確かに指さした。
そして、ぶるぶると体を震えさせる。
痙攣でもしているかのように震えだす。
少女も尋常じゃない、と、何かを感じる。
職員室に行き、先生に不審者がいることを報告しなければ、少女がそんなことを考える。
そうしていると、その白いそれは急に走り出した。
校舎に向かってものすごい勢いで走り出したのだ。
少女はすぐに逃げなくては、と、直感する。
あれはここに来る。走って、尋常じゃないスピードでこの教室にやってくる、少女にはそう確信できた。
少女は自分の荷物も持ち教室から飛び出た。
そうすると、近くの階段から、ヒョォォロロォォロォォロォォォロロロォォォ、という鳥が鳴く様な声がしてドタドタと階段を駆け上がってくる音が聞こえた。
もうすぐそこまでそれが来ていると感じた少女はトイレに駆け込み、トイレのドアをゆっくりと音がならないように閉じ鍵をかけた。
少女がトイレに駆け込んだ後だ、ガッシャンガラガラガラ、と少女がいた教室の方からものすごい音が聞こえてくる。
その音はしばらく続く。
しばらくして、またヒョォォロロォォロォォロォォォロロロォォォという鳥の鳴き声のような、そんな声が聞こえ、それが徐々に遠ざかって行く。
完全にその鳴き声のようなものが聞こえなくなった後、少女は泣きながら職員室にまで走る。
職員室にはまだ先生が何人かいて、泣きながら飛び込んで来た少女に驚く。
少女が体験したことを話しているうちに、一人の先生が少女の教室を確認してきた。
その先生の言う話では、教室が酷く荒らされてい他という話だ。
しかも、金属製の脚を持つ椅子や机がひん曲げられているというのだ。
とてもじゃないが人間の力では無理なように。
その後、先生達も対応に困り警察を呼ぶ。
だが、警察もこの惨状を引き起こした犯人の目星はまるでつかなかったという。
ひん曲げられた机の脚を見て、これは人間の仕業ではない、そう結論づけたと言う。
結局はその正体はわからず不審者が出たということになり、下校時刻が早くなったくらいだ。
こうていにいる【完】




