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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かくれんぼ

 学校が終わった後、少年は友人らと集まり公園でかくれんぼをしていた。

 単純な遊びだけれども奥が深い。

 かくれんぼはそんな遊びだ。


 少年は公園の隅にある公衆トイレの裏に隠れる。

 そこから鬼の様子を見る。

 鬼の動きに合わせて、場所を変えるつもりだ。

 一カ所に隠れ続けれるより、こちらの方がスリルがあり面白い。


 少年はそう考えていた。

 鬼役の子を見る。

 知らない子だ。

 公園で遊んでいれば、知らない子が混じることはたまにある。

 おかしなことではない。


 鬼役の子が、もーいーかい、と、大きな声で聴いてくる。

 少年は、居場所がわからないように、少し小さな声で、もーいーよ、と返事をする。

 幾人かの友人は大きな声で返事をする。


 日が西に傾き、もうすぐ夕闇がやってくる、そんな時間に鬼が動き出す。


 鬼役の子はあたりをゆっくりと見渡す。

 少年はトイレの陰から、トイレの方を向いているとき以外はその姿を観察する。

 トイレの陰に隠れた後はゆっくりと顔を半分だけ出して、鬼の動向を探る。

 鬼がトイレの方を向いていないのであれば、鬼の観察を続け、鬼がトイレの方を向いているのなら、慌てずゆっくりと顔をひっこめる。

 素早く顔をひっこめれば逆に気づかれてしまう。

 ゆっくりと不自然なことなく、顔を隠すのだ。


 ただ、今は鬼役の子はトイレの方を向いてはいない。

 遊具の方を向き、そちらに向かっている。


 それ自体はおかしい事ではない。

 けど、少年の動きがどうもおかしい。

 歩けば上下にも揺れるものだけど、その普段見かけない鬼役の子は並行移動でもする様に、すーっと地面を滑るように移動している。

 それを目の当たりにした少年は自分の目を疑いながらも、鬼役の子を観察する。


 鬼役の子は遊具のところまで行き、顔を左右に振り辺りを探している。

 この時はちゃんと頭が上下に揺れていた。


 そして、誰かを見つけたのか、すーっと移動する。

 その時少年は見てしまう。

 鬼役の子は足を動かしていない。

 本当に地面を滑るように移動しているのだ。


 少年は鬼役の子が人間ではないのではないか、少年にはそう思えた。

 少なくとも人間は普通の地面を明日も動かさずに滑るように移動などしない。


 そこで少年は迷う。

 見つかるべきか、隠れ続けるべきか、それともこの場から逃げるべきか、少年は迷う。


 かくれんぼの終わりは隠れた者全員が見つかった時だ。

 それだけが、かくれんぼの終了の合図だ。


 もし本当に今の鬼役の子が人間ではないとして、このまま逃げて少年の家まであの鬼が探しに来たら、そう考えると少年は逃げることが出来なかった。

 同じ理由で隠れ続けるのもなしだ。

 かくれんぼが終わらない。


 なら、わざと見つかって、かくれんぼを終わらすしかない。

 時間的にこれが最後のかくれんぼだ。

 もう日が暮れる。


 なら、明るいうちにかくれんぼを終わらせて、解散したほうがまだ安全ではないか、そう少年は判断した。

 それでも、最初に見つかるのは少年は嫌だった。

 見つかって無事で済むのか、それを少年は知りたかった。

 見つかり次第襲われるともなれば、また話は変わる。


 だが、少年のその心配は杞憂に終わる。

 遊具の辺りに隠れていた少年の友人が見つかり、一緒に隠れている者を探し始めた。

 少年の友人は見つかった後も、普通に歩き、いつも通りにしている。

 とりあえずすぐに襲われることはないのはわかった。

 だが、少年はもう少し様子を見る。


 少年の友人にはおかしなところはないが、あの鬼役の子に操られている、もしくは仲間にされているかもしれない、そんなことを考える。


 鬼役の子と友人は今度は砂場の方に行き、砂場の囲いに半ば砂に埋まるようにして隠れている別の友人を見つける。

 見つかった友人は笑われながらも鬼に加わる。

 少年の目には変わったところはない。

 いつもの友人達だ。


 鬼役の子は最後に移動するようにしていて、友人らに移動するところを巧妙に見られないようにしている。

 それを見た少年には見つかっても無事そうだと思える。

 そして、陽が完全にくれる前にこのかくれんぼを終わらせて、即座に解散する。

 それを実行しようとする。


 だけど、勇気が出ない。

 見つかっても平気なのか、確信が持てないでいた。

 ただ、なんとなくだが日が暮れてしまってはダメだ、そんな気が少年にはしていた。

 少年がそうやって迷っている間に、どんどん友人らが発見されていく。


 少年以外が見つかった時、少年も決心し自らトイレの陰から出ていく。


 そして、もう日が暮れるから帰ろう、と提案する。

 友人らのそれに同意し、ちりじりに解散していく。

 少年は、安堵の息を吐きだして、公園を後にする。

 もう少しで公園から出れるというときだ。

 少年の後ろから声がする。


 みーつけた。


 と。

 その声がかけられたとき、日は完全に落ちていた。





かくれんぼ【完】

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