まよなかのでんわ
真夜中に電話がかかってきた。
男は迷惑だ、そう思いつつも誰か身内の不幸でもあったのかもと、電話を、スマホを手に取る。
それは見知らぬ電話番号からかかってきていた。
男が電話を取り、もしもし、と返事をする。
そうすると女の声で、何で出たの? と、一言だけ言われて電話は切られる。
意味が分からない。
男はいたずら電話か詐欺かなにかか、そう思いその電話にかけなおすようなことはしなかった。
その夜はそれだけで何も起きなかった。
それから二、三週間後だ。
また真夜中、深夜の一時過ぎ、もう二時に近いような時間に男の電話、スマホが鳴る。
男は目をこすりながらもスマホを手に取る。
また知らない番号からだ。
男は念のためとスマホに出る。
そして、もしもし、と声をかけると、何で出るの? とまた女の声で言われ電話は切れた。
かかってきた電話番号は以前の物と一緒だった。
男はその電話番号をスマホを使って検索する。
すると、すぐにヒットする。
それは公衆電話の電話番号だった。
こんな時間に公衆電話? と、男は不振に思う。
そして、更にその公衆電話の場所も探せることに男は気づく。
検索して出て来たその公衆電話の場所は山の中、しかも、山の中にある霊園からだった。
それを知った瞬間、男の体にゾワゾワとしたものが走る。
男は不気味に思う。
少なくともいたずらや詐欺の電話ではなさそうだ。
それからそういうことが月に一、二度の頻度で起きた。
着信拒否にするかどうか、男が迷い始めた時だ。
ついでに、今まで着信拒否にしなかった理由は、それで呪われでもしたら嫌だ、と、そう男が考えたからだ。
その番号だったら出ないし、着信音を個別に設定し、無音の物にしてそもそも気づかないようにした。
電話をしてくる主も、出て欲しくないようだし、これで良いだろう、そう男は考えていた。
そして、その日も電話がかかってくる。
着信音はならない。
だが、スマホの画面が明るく光る。
それで男は起きてしまう。
そして、寝ぼけていたので、つい電話に出てしまう。
電話に出た瞬間、男もやってしまった、そう思った。
そして、スマホから女の声が聞こえてくる。
これで三度目よ、と。
少し、うれしそうな声で、そう伝えて来た。
確かに三度も電話に出てしまった。
男もそう思った時だ。男の視界が途切れる。
そして、男は公衆電話の前に居る。
適当な数字を押して、電話がかかる番号を探し始める。
三度出てくれる人を探して、毎晩毎晩、何度も何度も適当な番号を打ち込んで電話を掛ける。
けど、意識がもうろうとして適当に押した番号を覚えられないし、電話に出られるとリズムが狂う。
電話に出られるとうれしいはずなのに、なぜか、なんで出た、と怒ってしまう。
男は女の代わりになってしまい、自分の代わりになってくれる人を求めて毎晩、適当な番号に電話をかける。
まよなかのでんわ【完】




