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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かごのなか

 少女が使う通学路の途中に骨董品を扱うお店がある。

 様々な物が雑多に置かれたお店だ。

 ショーウインドウがあり、いろんなものをそこから眺めることができる。

 そんなお店だ。


 ショーウィンドウに置かれているわけではないが、ショーウィンドウから見える位置に大きな鳥かごが見える。

 古く金色に輝く大きな鳥かごで、これまた大きなスタンドで吊るされている。

 古くはあるが、とても綺麗な鳥かごで少女の目をよく引いた。


 時間があるときは、少女はよくそのショーウィンドウに張り付いて、その金色の鳥かごを見ていた。

 ただ実際にその鳥かごに鳥が入れられているわけではない。

 何も入っていない。

 骨董品屋の売り物なのだから、それは当たり前のことなのだろうが。


 それでもその鳥かごは少女の目を引いた、いや、惹いたのだ。


 ある日、学校の帰り、少女は帰るのが遅くなり辺りは真っ暗な時間のことだ。

 その骨董品屋の前を通る。


 その日は骨董品屋もすでに閉店しており電気は落ちていた。

 だが、ショーウィンドウにシャッターはまだ降りていない。


 暗くなった、電気の落ちた骨董品屋の店内が見て取れる。

 少女は少し気になりショーウィンドウ、その奥にある鳥かごを覗き込む。


 薄暗い店内の中に金色の鳥かごは確かにそこにある。


 のだが、鳥かごの中に何かが居る。

 黒い毛の何かが居る。


 最初それは毛の長い猫に少女には見えた。

 だが、それが顔を上げる。

 文字通り顔を上げたのだ。


 それは人の顔だった。

 頭部だけが、長いぼさぼさの髪の毛を振り乱して、鳥かごの中に入っている。

 ぎょろりとした丸い目。耳まで裂けるような大きな口、青白い肌。そして、ぼさぼさの髪。

 それが鳥かごの中に入っているのだ。


 少女はそれを見た瞬間、恐怖で一歩も動けなくなる。


 少女が恐怖で身動きできないでいると、鳥かごが左右に揺れ始める。

 最初は少しの揺れで、勢いをつけるように左右に大きく揺れ始めたのだ。

 まるで勢いをつけて少女に飛び掛かるかのように。


 鳥かごだけでなく、それを支えるスタンドすら揺れるように、そのボサボサの髪の毛を振り乱し揺れだした。

 揺れながらその鳥かごの中の顔は少女に不気味に笑いかける。


 少女は余りにもことに後ろに、尻もちをつくように倒れる。

 そのおかげか、少女の体がなんとか動くようになる。

 少女は立ち上がり、もう一度ショーウィンドウをの中を見る。

 鳥かごはあるが、もう中に顔はなく、鳥かごが激しく揺れることはない。


 ただ先ほどのことが事実であったことのように、鳥かごはゆっくりと、静かにだが、鳥かごは揺れていた。

 そして、じきにそれは動かなくなる。


 それ以来、少女はもうその鳥かごを見ることはなくなった。

 何なら、その骨董品屋の前は走って通り抜けるようになった。


 ただそれだけの話だ。






かごのなか【完】

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