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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かぞえる

 少女が部活の朝練で朝早く学校に行かなければならない時だ。

 それを見かけたのは。


 それは朝霧の中にいた。

 それ程濃い朝霧ではないが、それの近くに行くまで少女はそれの存在に気づけなかった。


 それはしゃがんでいた。

 砂利道の地面を見つめ、指を動かしている。

 地面に落ちている何かを数えているようだった。


 少女はこんな朝早くに近所の子供かな、とそう思った。

 だが、それは人間ではなかった。


 しいて言うならば、鬼だ。

 小さな、子供くらいの鬼だ。

 おとぎ話で語られるような、そんな鬼だ。


 仮装かと思ったが、それにしてはリアルだ。

 地面を見つめる目が、鳥の、猛禽類のような瞳で黄色く爛々としている。


 口からは小さいながらに牙も生えていた。

 体は茶褐色で枯葉のような色をしている。

 ついでに全裸だ。


 一つだけ鬼と違うと言えば、頭に角は生えていない。

 だが、それは明らかに人間とは違っている。


 少女はその存在を見て驚いて、声をあげてしまう。

 鬼のような存在も少女に気づく。

 そして、鬼のようなそれは少女に向かい言った。

 あっ、見られちゃった、攫わなきゃ、と。

 少女はその言葉で恐怖し、動けなくなる。

 だが、逃げなくちゃとはわかっているのだが、足がすくんで動かない。


 少女が恐れ慄いていると、鬼のようなそれがさらに続ける。

 今は小石を数えないといけないから、それが終わったら攫わないと、と。

 たしかに鬼ののようなその存在は地面に転がっている石を数えている。


 ただ、鬼のような存在がしゃがみこんでいるところは砂利道だ。

 石ころは無数にある。


 そこで少女は正気に戻り、地面にある砂利を掴み、鬼のような存在の手前に投げた。

 鬼のような存在は驚く、そして、最初から数えなおさなくちゃ、と、小石を数え始める。


 少女はその隙に、全力で来た道を引き返す。

 そして、家に帰り、今見て来たことを両親に伝えた。

 両親は不審者と思い、警察に電話をする。


 だが、それで鬼のような存在が捕まるわけもない。


 不審者注意の張り紙が増えただけだ。

 それでも、少女はまだ無事だ。


 少女が定期的に鬼のような存在が居た場所に砂利を巻きに行くからだ。





かぞえる【完】

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