きんようび
今日、頑張れば休みだ。
男はそう考えて仕事をしていた。
最近はまだまだ暑く仕事をするのも大変だ。
外に出れば汗だくになり、事務所に帰れば冷えすぎた冷房で寒気を感じる。
仕事も抱えるほどあり、本当に息を着く暇もない。
だが、今日は金曜日だ。
今日を乗り切れば明日、明後日は休みだ。
今日を頑張れば明日はゆっくりと寝れる、と気合を入れる。。
最近、疲れがたまっているので家でのんびりと過ごそう。
そう、男は考えていた。
それを糧に仕事を頑張っていた。
だが、金曜日は不吉な曜日と言われている。
キリストが磔刑に処せられた金曜日の前の晩る最後の晩餐だったと言われるからだ。
だが、男はキリスト教徒でもない。
一応は、仏教徒ではあるが、何か信じているわけでもない。
というか、葬式や法事の時にしか関わり合いがない。
宗教とはその程度の間柄だ。
どちらかというと、無宗教と言った方が良いのかもしれない。
だからか、男は金曜日だからと、なにかを感じることはない。
ただの休日の前日でしかない。
けれども、今日はなにかとトラブルが多い。
男のミスもあるが、それだけではなく取引先のトラブルも続いた。
男がてんやわんやで対応して、何とか終電前に仕事が片付く。
今日は昼ごはんも食べる暇がなかった、と、男がコンビニで弁当を買い家に帰る。
そこで、スマホに留守電が入っていることに男は気が付く。
男は留守番電話を確認する。
男の母からだ。
母は留守番電話で、明日の法事のこと忘れてないわよね? と、メッセージを残している。
男は呆然とする。
明日は法事で出かけなければならない。
休みではない。
仕事ではないが、休みではない。
男はため息を吐きだし、とぼとぼ帰路につく。
金曜日は希望と不吉に満ちている。
きんようび【完】




