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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かきのき

 男の住む家の庭に柿木がある。

 もうかなりの老木で、しばらく実をつけることもなくなった、そんな枯れ木とも思える柿木だ。


 そんな柿木が何年かぶりに実を着けた。

 渋柿なので取って食べたりはしない。

 渋抜きをすれば食べれるはするだろうが、男はそこまでしてその柿が食べたいわけでもない。


 だが、男はただ元気がなかった柿木が実をつけたことに喜んだのだ。


 けれども、その実を狙ってか鴉がやってくるようになった。

 カァカァと鴉がいつでもうるさい。

 稀に柿の実でも取り合っているのか鴉同士が喧嘩するように、激しく鳴く鳴き声まで聞こえるほどだ。


 その声があった次の日は柿木の下に、黒い羽が何枚も落ちている。

 そこまでして、あの渋柿が食べたいのか、と、男は思いつつも、その黒い羽を片付けるのだ。


 羽を片付けているときに男は気づく。

 柿の木の根元にいくつもの掘り返したような跡があることに。

 男はこんな場所を掘り返した覚えはない。

 

 野良猫がトイレにでも使っているのか、そんなことを考える。

 それが栄養になって柿の木が実をつけるように? そんなことまで男は考えた。


 だが、そんなこと本当にあるのだろうか?


 そう思った男は、その掘られた跡をシャベルで掘り返す。

 そこから出てきたのは猫のトレイどころの話ではなかった。


 鴉だ。

 鴉が埋まっているのだ。

 柿の木の根に雁字搦めにされた鴉が埋まっていたのだ。

 男は急いで他の場所も掘り返す。

 他の場所にも鴉が埋まっている。

 そのどれもに鴉の死骸にまとわりつく様に柿の木の根が伸びているのだ。


 男はゾッとする。


 男はすぐに柿木を切ることを決める。

 このまま、この柿の木をそのままにしておくことなどできなかった。

 もし、柿木が鴉では物足りなくなったら?

 人間まで襲うようになったら?

 そう考えたからだ。


 男は急いで柿の木を鋸で根元から切り倒した。

 そう太い木でもないので、簡単に切り倒せた。


 その時、柿の木の切り口からは血のような樹液がドクドクと流れ出ていたらしい。





かきのき【完】

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