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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かゆみ

 痒い、痒い、痒い。

 男は腕を、左腕を掻く、掻きむしる。


 じっとしてられないような、痒みが男の左腕から感じられる。

 既に蚯蚓腫れになってしまっているが、虫に刺されたようなあとはない。


 ただどうしょうもない痒みが男を襲うのだ。


 なぜこんな強い痒みが男を襲うのか、男は理解できない。

 蚊にも刺されたわけではない。

 特定の一か所が痒いわけでもなく腕全体が痒いのだ。


 発疹のような物ができたわけでもない。

 何もないのだが、ただただ強い痒みを男を襲っている。


 男の左腕には、掻きむしった痕、蚯蚓腫れがいくつもできている。


 男はしていた作業をやめ、左手を見て確かめる。

 蚯蚓腫れ以外、本当になにもない。

 なぜこんなに痒いのか、男には本当に心当たりがない。


 いくら掻きむしっても痒みは取れない。

 男は急いで作業をしなければならないのだが、痒くて集中することができない。


 特に虫刺されの後はないが、男は虫刺されの薬を塗って気を紛らわすことにする。


 虫刺されの薬を腕に塗ると、スッーとする、痒みを和らげる、いや、感じさせなくする感覚に男は満足する。


 その時だ。

 掻きむしってついていたと思っていた蚯蚓腫れがゾワゾワと動いた。

 腕の上を、皮膚の下を、蠢いていたのだ。


 男は目の錯覚かと思ったが、その蚯蚓腫れは今も虫刺されの薬を塗られたところを避けるように、男の腕を、皮膚の下を蠢いている。

 たしかに蚯蚓腫れは動いている。

 男が蚯蚓腫れだと思っていた物は、蚯蚓腫れではなかったのだ。

 皮膚の下に何かが潜り込んでいて、それが動いていたのだ。


 その事に気が付いた男は即座にパニックになる。

 寄生虫だ。

 寄生虫に知らぬ間に寄生されていたのだと。


 だから、腕がこんなにも痒かったのだと。

 男は作業をやめて、病院へと駆け込んだ。


 だが、男が病院に駆け込んでた時には、既に腕の蚯蚓腫れは既に消えていた。

 男は必死に医者に説明するが、医者は男の言うことを信じなかった。


 だが、男は気が気じゃない、そのまま今度は大きな病院に行き、精密検査を受けた。

 その結果でも寄生虫などは発見できなかった。


 納得は出来なかったが、医者にそんな蚯蚓腫れができるほどの寄生虫ならCTスキャンでも発見できますよ、と冷静に言われて納得するしかなかった。


 それから男は痒みも感じなく、蚯蚓腫れができることもなかった。

 男も気のせいだったと、思うことにした。


 次に男が強い痒みを覚えるのは、それから三日後のことだ。

 全身真に蚯蚓腫れのような物ができ、男は発狂する。

 あまりもの痒さに男はベランダから身を投げる。


 男は帰らぬ人となった。

 奇妙なことに男の死体からは、何本もの血で書かれた細い線が、どこかへとつながるように伸びていたという。








かゆみ【完】

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