表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それなりに怖い話。  作者: 只野誠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/679

のっく

 部屋のドアをコンコンとノックされる。

 この部屋の住人の男はギョッとする。


 今、この家にいるのは男一人のはずなのだから。

 家族は里帰りしていていないはずだ。

 男は仕事があったので、それにはいけなかったが。


 なんにせよ、今はこの家には男一人のはずなのだ。


 なのに、ドアをコンコンとノックされたのだ。

 男は聞き間違いかと思い無視する。

 そして、パソコンで仕事の作業を続ける。


 だが、しばらくして、再びコンコンとドアをノックされた。

 今度は間違いではない。

 男は、誰だ、と声を荒げる。

 返事はない。

 当たり前だ。今、この家には男しかいないはずなのだから。

 泥棒か、と男は思う。

 男が出て行って逃げ出すような泥棒ならまだしも、強盗のような輩だったら大変だと、男は少し考える。

 幸いこの部屋は仕事部屋の為、鍵がかかる。

 男は音が鳴らないように、ゆっくりと部屋の鍵をかける。

 カチンと言う音がして、ドアに鍵がかかる。

 これでそう簡単にはこの部屋には入れないはずだ。


 男が次にしたことは、ドアに耳を当てて外の音を少しでも拾おうとすることだった。

 そうすると、聞こえるのだ。


 何者かの息遣いが。


 何者かがいることは事実のようだ。

 続いて男は床に頭を付けて、ドアの下の隙間から外の様子を見る。

 そうすると、見えたのだ。


 何者かの白い足が。


 男はここで警察を呼ぶかどうか迷う。

 知り合いのいたずらか、泥棒か、その判断が男には着かなかったからだ。

 男は決心する。

 いざとなったら窓から逃げればよいと。

 ここは二階だ。

 窓から外に逃げれなくもない。


 男はもう一度ドアに向かって、そこにいるんだろ? 誰だ? と、声を掛ける。

 そうすると、ドアのむこうの人物は、ドアノブをガチャガチャガチャと鳴らして来た。


 男はその音に震え上がる。

 脅しとばかりに、警察に電話したからな、と声を荒げる。

 まだしてないが、本当にそうするためにスマホを取りにドアの前から離れる。

 スマホが机の上に置きっぱなしだ。


 男がドアの前を離れ、スマホを手にしたとき、ドアノブを鳴らす音が止まる。

 そして、カチャンとなぜか鍵の開くことがする。


 男は今度こそ恐れ戦く。


 スマホ片手に、窓から屋根の上に飛び出す。そして、息を殺して窓の外から部屋の様子を観察る。

 部屋のドアが開く。

 だが、そこには誰もいなかった。


 しばらく待っても何も起きない。

 誰もいない。

 ただ勝手にドアが開いただけだ。


 男は恐る恐る窓から家の中へと戻る。

 そして、電気を着けながら家の中を隅々まで見て回る。

 その結果、誰もいない。

 男の部屋以外の窓も玄関の戸もお勝手の戸もしっかりと施錠されていて、誰かが入ってきた様子もない。


 だが、その事実が男を震え上がらせる。

 では、ノックして来た者は誰だったのか、ドアノブを揺らした者は誰だったのか、鍵のかかったドアをあけ放ったのは誰だったのかと。


 男は財布とスマホ、それと仕事用のノートパソコンを持ち、家を逃げるように出る。

 家族が返ってくるまで、ネットカフェにでも篭るつもりでだ。





のっく【完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ