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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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びんのなかのこびと

 少女は河原で綺麗な瓶を拾った。

 形は何の変哲もない瓶だが、日の光を当てると七色に輝く、そんなちょっと不思議な瓶だった。


 少女はそれを家へ持って帰る。

 綺麗に洗いそれを部屋に飾る。


 水を入れて、少女は花瓶代わりにするつもりだった。

 ただ、今は挿す花がないので、とりあえず水だけ入れて机の上に置いておいた。

 それだけでも七色に、虹色に輝く瓶は少女を魅了した。


 その夜のことだ。


 ふと真夜中に少女が目覚めると、机の方から淡い光が漏れてきている。

 その光で少女も起きたのかもしれない。


 少女は机を見る。

 そうすると河原で拾って来た瓶が、淡く、本当に淡くだが、光を発しているのだ。

 水を入れた瓶の中に、淡く光る人影が映し出されている。


 人影がはかろうじて頭と体、四肢があるのがわかる程度で、本当に人影でしかない。


 少女はベッドから起き上がり机の上へ行く。

 そして不思議そうにその人影を見る。


 そうすると少女に向かい人影が話しかけてくる。

 人影は少女に、俺を拾ってくれたのはお前か? と、訪ねた。

 少女は驚きながらも、ゆっくりとうなずく。

 そうすると人影が、助かったぜ、あのままだと割れていたかもしれないしな、と、そう言って笑った。

 いや、正確には笑ったような気がしたのだ。

 表情がわかるほど、その人影が鮮明には見えない。


 そして、瓶の中の人影は、お礼に願いを叶えてやる、そう言ってまた笑った、そんな仕草をする。


 少女は願い事を考える。

 思いついたことを瓶の中の人影に告げる、毎日が元気に過ごせますように、と。


 その願いを聞いた、瓶の人影は笑うのを辞めた、そんな気がした。

 そして、人影はつまらなそうに言った。

 知っているか? 悪魔との取引には命が必要なんだぜ? と。


 少女はその言葉を聞いて、泣きそうな顔を見せる。

 綺麗な瓶ではなく悪魔を拾って来てしまったと。


 そして、瓶の中の小さな悪魔は続ける。

 でも、おまえの願いは、元気に過ごせるだ、これでは命を奪えない、と。

 そうして、瓶の中の悪魔は姿を消す。


 もう淡く光を発することもない。

 少女は、そんなことがあったにも関わらず、その後もその瓶を捨てずに大事に花瓶として使った。


 命は奪われなかったが、少女は天寿を全うするまで、怪我や病気なく元気に過ごせたという。

 それが瓶の力かどうか、知る者はいない。





びんのなかのこびと【完】

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