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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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おまえだよ

 女が夜仕事から帰っていると、急になにもない道で、おまえだよおまえだよ、と声をかけられた。

 女は焦って声の方を見る。

 が、そこには小さな藪があるだけだ。

 人が隠れるほどの藪でもない。

 

 女は身構え少し待つが、特に何も起きないし何も出てもこない。

 聞き間違いだったのだと女は思い家へと帰る。


 次の日もその場所で、おまえだよおまえだよ、と声をかけられる。

 たしかにかけられる。

 小さな、本当に何もない藪からだ。


 女は今度は聞き間違いではない、そう確信してすぐにその場から走って逃げだす。

 次の日の朝、会社に行くときのことだ。


 その薮の近くに花束が置かれていることに気が付く。

 ちょうど通りかかった近所の知り合いのおばさんに花束のことを聞くと、一週間くらい前にここで交通事故があって人が亡くなったそうだ。

 あの声は、事故にあった、ここで亡くなった人の声なのではないかと女は思い当たる。


 だが、それにしては、おまえだよ、とはどういう意味なのだろうか。

 女は色々と考える。

 そして、最終的に二つの説に絞り込まれる。


 事故を起こした加害者と勘違いされている説。

 次に事故にあうのはおまえだよ、という説。


 どちらもたまったものではない。

 女は薮の前を通る帰り道を諦め、違う道で帰るようにする。


 だが、女がちょっとした空き地の前を仕事帰りに歩いていた時だ。

 草も何も生えてない、闇しかない空き地から、おまえだよおまえだよ、と声が聞こえてくる。


 流石に女も何もない場所から声を掛けられ、ゾワゾワした感覚に襲われ、走って逃げだす。


 どんなに帰り道を変えても、必ず一度は帰り道の人気のない場所で声をかけられる。

 けれども、誰かと一緒なら声はかけられない。

 その事がわかった。

 一人がダメなのだと。


 流石に毎日一緒に家まで帰ってくれる友人はいない。

 それでも友人らに頼み込み、なるべく家まで帰るようにしたし、人気の多い場所を通って帰るようにもした。


 それでも限界はある。

 ある日どうしても一人で家に帰らなければならない日が訪れ、女は帰り道で、誰もいないところで声をかけられる。


 おまえだよおまえだよ、と。


 精神的にも限界を迎えていた女は、なにがよ、と大声でその声に答えてしまう。

 そうするとすぐに返事が返ってくる。

 次におまえが私になるんだよ、と。


 女は意味が分からなかった。

 その後、女が何を言おうが喚こうが、返事はもう返ってこなかった。

 

 それから数日後のことだ。

 女が交通事故で死んだのは。


 そして、女は解放されるために、今日も声をかける。

 おまえだよおまえだよ、と。





おまえだよ【完】

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