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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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きんぎょ

 夏の夜。

 祭りからの帰り道。

 夜なのに湿った暖かい、いや、まだ、暑い夜風が吹く。


 少女はそんな蒸し暑さが嫌になりながらも、祭りの金魚すくい捕まえた金魚を見る。

 オレンジ色の金魚がビニール袋の中を元気に泳いでいる。


 少女の家はアパートだけど、金魚ぐらい飼えるだろうと、両親からもその許可も出るだろうと、そう期待を持って金魚を持って帰る。


 家について、とりあえず洗面器に水を張り金魚を放つ。

 両親と話し、明日金魚鉢と餌でも買いに行こうと、そんな約束もする。

 少女の家で初めてのペットができた日だ。


 次の日、金魚鉢と餌を買ってきて、少女は洗面器の中の金魚を金魚鉢へと移す。


 そして、金魚鉢を少女の家の居間に飾る。

 少女が金魚に餌をやると金魚は餌を入れれば入れるだけ、パクパクと食べる。

 少女は毎日金魚に餌をやった。


 金魚はもともと強い魚だ。

 その生命力はとても強い。


 ペットを持つのが初めての少女の家でも金魚はすくすくと成長していく。


 しばらく飼えば、金魚と言えど愛着は湧く。

 少女の両親も本格的に金魚をかわいがり出す。


 四角い本格的な水槽を飼い、循環ポンプとろ過機まで買った。

 それと自動餌やり機もだ。


 だが、自動餌やり機がまずかった。

 毎日餌をやっていたため、愛着を持っていた少女が餌をやれなくなったため、金魚に興味がなくなってしまったのだ。

 ただ餌だけを毎日補充する。

 そんな日が続いた。


 ある日、少女は夢を見る。

 飼っていた金魚が死んでしまう夢だ。

 少女は慌てえて、水槽を洗い、水槽の水を変え、金魚の世話をしてやる。

 そして、自動餌やり機をやめて、毎日また自分で餌をあげるようにした。

 少女が再び金魚をかわいがり出す。

 その愛情を一身に浴びて金魚も成長する。


 今はそれなりに大きな水槽に金魚が一匹だけだ。

 流石に寂しいだろうと、父親が似たような金魚を買ってきて水槽に入れてやる。

 金魚が増えたことで少女も喜ぶ。


 だが、次の日、初めからいた、少女がお祭りの金魚すくいで取ってきた金魚以外の金魚が水槽から消えていた。


 少女は父親に確認すると、父親も驚く、母親に聞くが母親も驚く。

 両親が確認すると大きな水槽には確かに一匹しかいない。

 昨日買ってきた金魚がどこかへと消えてしまっている。


 共食いしたとしても、多少なりともその残骸は、死骸は残るはずだ。

 それすらない。


 父親が再び似たような金魚を飼って来る。

 それを水槽に放つ。


 ついでにと父親は水槽用のライトを買って来たので、それも水槽につけてやる。


 ライトアップされ大きな水槽を泳ぐ金魚は、少女にとってとても綺麗なものだった。

 なので、夜遅くまで少女は金魚を見ていた。

 居間に一人残り、金魚を見ていた。


 そして、少女は他の金魚が消えた理由を知る。

 少女が金魚すくいで捕まえた金魚が、普段は少女の親指程度しかない金魚が、二倍や三倍の大きさになり、他の金魚を一口で飲み込んでいたのだ。

 金魚が少女に気づく。


 そうすると、金魚はニィとまるで人間の様に笑った。

 少女の視線に応えるように笑ったのだ。


 翌朝、金魚は元の大きさに戻っていたし、一匹しか残っていなかった。

 父親がもう一度、と言うと少女が父親を止めた。

 この金魚は嫉妬して他の金魚を食べちゃうから、と。


 だから、少女は一匹だけの金魚に今日も餌を上げ続ける。




きんぎょ【完】

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