表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それなりに怖い話。  作者: 只野誠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

214/677

かんしかめら

 男の家では最近いたずらが多発していた。

 家庭菜園を荒らされたり、花壇を踏み荒らされたり、と。

 庭が荒らされたので妻がとても悲しんでいる。

 男もどうにかしないと、と思い立つ。


 警察にも行ったが、見回りを強化する、と、その言葉で終わってしまった。


 仕方なく男は家に監視カメラを設置する。

 スマホでその様子を確認できる奴だ。


 結構な出費だったが、設置したら設置したで、意外と面白い。

 仕事の合間に、監視カメラを見ると、妻が庭をいじっている様子が見て取れるからだ。


 せっせせっせと庭いじりする妻の姿を見て、男も和んだ。

 実は良い買い物だったのでは、と、思うように男もなっていた。


 その日も、仕事の合間に男は何げなく監視カメラの映像をスマホで確認していた。


 そうすると、とうとう庭を荒らしている犯人が現れた。

 それは、監視カメラに写っていたのは妻自身だった。

 男が知っている妻とは別人のように、庭を荒らす妻の姿が画像には映っている。

 男は録画ボタンを無意識のうちに押す。


 妻は花壇を踏み荒らし、家庭菜園をめちゃくちゃにした後、なぜか逃げるように去っていった。

 その後、五分くらいして同じ格好の妻がカメラの前に現れ、立ち尽くしている様子が見れた。


 男には訳が分からなかった。

 監視カメラのことはもちろん妻も知っているのだから、訳が分からない。


 その日、家に帰り、男が妻にそのことを問いただすと、妻は怒り出した。

 なんで自分で庭を荒らさないといけないのかと。


 そこで男は監視カメラの録画データを妻に見せる。

 それを見た妻は、本当に目を大きく見開き、驚いている。


 そして、これ私? 私なの? こんなことしてない、と、驚いている。

 とてもじゃないが、男には演技には見えなかった。


 男は妻が二重人格なのかと、疑い始める。

 だが、妻はこれは自分ではない、そう言い始めた。


 妻は庭いじりする直前まで、隣の奥さんとしばらく話し込んでいたそうだ。

 翌日、隣の奥さんに話を聞くと、確かに一時間くらい話し込んでいたと証言を貰う。


 監視カメラの映像では、妻、もしくは妻のような女が庭を荒らしてから、妻が来るまで五分程度だ。

 その証言が証拠になるとも思えないが、そもそも不可解なことが多い。


 男も困惑するが、妻も隣の奥さんも嘘をついているとは思えないし、そもそも、妻がそんなことをする意味がない。

 その夜、ベッドの上で男は何となく監視カメラの映像をスマホで見ていた。

 暗くとも暗視モードで見ることができる。


 しばらくすると、監視カメラの前に妻が、いや、妻のような誰かが現れる。

 そして、庭を荒らしだした。


 男はギョッとして、隣で寝ている妻を起こし、スマホを見せる。

 妻もその映像を見て驚く。

 スマホの映像では、今まさに妻のような女が、庭を荒らしている最中なのだ。


 男は慌てて庭の様子を見に行く。

 だが、そこには荒れ果てた庭があるだけで、誰もいなかった。


 男が寝室に戻ると、妻がスマホ片手に青い顔をしてブルブルと震えている。


 どうしたのか、と男が訪ねると、妻は声を震わせてスマホを見せて来た。

 なにかトラブルになったときのために、録画しておいたらしいのだが、スマホの映像では男が庭に出ていく寸前、妻の偽物が唐突に消えた。

 そして、男が監視カメラの映像に現れる。荒らされた庭を呆然と見ている姿が映し出された。


 男は自分たちの手に負えるものではない、そう判断した。

 せっかく手に入れたマイホームだが、男は手放すことを決心した。

 引っ越してからは、妻の偽物が現れることはなくなった。


 あれがなんだったのか、男にもその妻にもまるで分らないままだ。






かんしかめら【完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ