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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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がたがたがた

 ここ最近、男は寝不足だった。

 と、言うのも、深夜に物音が聞こえるからだ。


 大体深夜の二時過ぎ頃。

 どこからともなく、ガタガタガタと何かが揺れる音がする。

 いつの頃からか、男にも思い出せないが、祖父の十三回忌が終わった頃だろうか、確かその位の時期のはずだ。

 ガタガタと揺れる音がするのだ。

 

 地震ではない。

 部屋が揺れているわけではない。

 なにか、それなりに大きな、棚のような物を揺らす、そんな音がどこからともなく聞こえてくる。


 男は最初こそ、泥棒でもいるのか、そう考えて、深夜に起き、その音の出元を調べようとしたのだが、特定はできなかった。

 確かに、男の家の中から、家のどこかから、ガタガタガタと何かが揺れるような聞こえてくるのだが、その場所をどうしても特定できないでいる。


 しいて言うならば、壁の中から、その音が聞こえてくるのだ。


 それに揺らすような音はするものの、実際に揺れているわけではない。

 ただ、棚やなにかを揺らすような音だけが、ガタガタガタと聞こえてくるのだ。

 毎日ではないが、三日に一度は結構な音がする。


 なにせもうかなり古い家だ。

 何かガタが来ているのかも知れないし、鼠などが壁の中に入り込んでしまったのかもしれない。

 そう考えた男はこの家を建てたと言う工務店へと連絡する。


 ちょうど長期休暇の時期と重なり、一週間ほどお時間がかかるという話だ。

 その間も、ガタガタガタと音がする。


 恐らくは壁の中。

 一週間ほど時間があったので、男はこの家の図面を引っ張り出し、音のする壁の場所を確かめる。

 図面を見ると、そこには二階へと送る給水管、排水管の通るPS、パイプシャフトと書かれている。

 男は疑問に思う。

 この家は一軒家だ。

 わざわざパイプシャフトを作る様な規模の家ではない。

 なのに、この家にはパイプシャフトがあるのだ。


 この家を建てたのは、男の父親、その父親、つまりは男の祖父だ。

 男は不思議に思いながらも、まあ、古い家だから、と納得した。

 そして、音の理由もパイプシャフトだから、と、なんとなく思っていた。


 仮に配管が鳴っているとして、そんな何か使う時間でもないのに、ガタガタガタと音が鳴るのはおかしなことだが。


 時間が経ち、工務店の者が職人を連れてやって来る。

 時間があったので、男もそのガタガタガタと言う音を録音して、工務店の者や職人に聞かせてやる。

 かなり大きな音だ。


 パイプシャフトなら点検口があるはずだと探すが、そんなものはない。

 図面にも記されていない。


 そこで男の了承を得て、職人はパイプシャフトに点検口を新たに作る。

 そのための穴を開ける。


 真四角な人が覗けるような穴を。


 何十年ぶりかにそのパイプシャフトに光が入る。

 そこにあった物に全員が驚く。


 それは骸骨だった。

 間違いなく人骨だった。

 いや、正確には骨ではない、皮もある。

 ほとんど骨とかわらないようなミイラがそこにあったのだ。


 恐らくは人の、完全に干からび、皮と骨だけになったミイラだ。

 それが何重にも荒縄のような太い縄で、金属製の配管にきつく括りつけられていた。


 男の家に悲鳴が、職人の、男の、工務店の者の、悲鳴が上がる。


 その後、警察が来て色々と調べる。

 おおよそ七十年ほど前の人間の遺体で、恐らくは人柱にされたのではないか、そんな話だった。

 事情を知っている祖父ももういない。

 男の父親は今は老人ホームに入っていて、かなり認知症が進行しており話を聞くのも無理だった。


 警察の話では、あまり表に出してよい話ではないのだが、この辺りの古い家ではたまにある、と言う話だった。

 とりあえずは事件性は無いと判断された。

 男は人一人死んでいるのにそんな物か、と思いつつも、もうこの家に住む気にはなれなかった。


 家を取り壊し、その跡地に賃貸用のアパートを立てた。

 その際、パイプシャフトの点検口には、内側からも開けられように内側に取っ手を、無理いってつけてもらった。


 ただそれだけの話だ。





がたがたがた【完】

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