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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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まつりばやし

 夜になると祭囃子が聞こえてくる。

 少年は近くで祭りでもやっているのかと、そう思っていた。


 少年は母方の田舎に来ていた。

 言ってしまえば田舎らしい田舎だった。


 そんな田舎で夜になると、それも夕方ではなく、人が寝静まるような時間、日が変わりしばらくたった頃の時間、そんな時間にどこからともなく祭囃子が聞こえてくる。

 楽し気な調子で、太鼓が打たれ、笛が鳴る。


 少年は次の日に、祖母に、お祭りやっているの? と聞くと、この時期はやってない、と返答が返ってきた。

 なので、少年は昨日の夜、お祭りの音が聞こえたよ? と祖母に伝えると、祖母は不思議そうな顔をしただけだった。


 そこで少年は今度は祖父にその話をする。

 祖父は少し驚いた顔を見せる。


 そして、祖父は少年に伝える。

 きっとそれは、山のお祭りだよ、と。


 それは何かと、少年が聞くと、近くの山には神様が住んでいて、その配下の者たちが、たまに祭りを開くのだと言う。

 少年は祖父に、それはどんなお祭りなの? と聞くが、祖父は誰も知らないさ、と笑って答える。


 祖父の話では、祭囃子が聞こえてくるが、その音の方向へ行っても何もない。

 どんなに音のなる方へ行けど、その音の元へ、祭囃子の元へはたどり着けないのだという。


 逆に、たどり着行けしまうと、そのまま山の神様に気に入られ連れていかれてしまう、そんな話だった。


 それを聞いた少年は、自分も連れていかれるのはないかと、不安になる。

 その夜も、少年の耳には祭囃子が聞こえてくる。


 しかし、今日はそれだけではない。

 少年は尿意を催してしまったのだ。


 少年は限界まで我慢するが、ついに我慢できなくなり、トイレを目指す。

 そして、トイレで用を足していると、祭囃子の音がすぐ近くから聞こえてくる。

 トイレの窓、そのすぐ外から祭囃子が聞こえてくるのだ。


 少年は、連れていかれる、と、そう思い目を瞑る。

 硬く目を閉ざす。


 少年が用を足しながらも、恐怖からトイレの中で目を閉じていると、トイレの窓がガラガラと開く音がする。

 そして、おやまあ、と、抑揚のない声でそう言われた。

 けれど、その声の主は、ここは加牟波理様の場所だから、そのようなことを言い、トイレの窓を再びガラガラと閉めて、その声の主の気配は消えていった。

 酷い訛りで、少年には正確に、その言葉を聞き取れなかったけれども、加牟波理様の場所にいたから助かった、その事だけは理解できた。

 そして、トイレこそがその場所だとそう確信していた。


 少年はそのままトレイに朝まで篭る。

 祭囃子が聞こえなくなった後も、少年はトイレに篭る。


 翌朝、祖父にトイレで発見された少年は、すぐに昨夜のことを話す。

 そうすると祖父は驚いた顔を見せる。


 そして、少年に告げる。

 作り話だったんじゃがな、と。





まつりばやし【完】

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