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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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まちあいしつ

 女は病院の待合室で自分の番が呼ばれるのを待っていた。

 その病院の待合室は、なぜか薄暗く気味が悪い。


 まだ昼なのになぜか薄暗い。


 そんな待合室だった。

 他に患者はいない。

 なのに呼ばれない。

 いくら待っても呼ばれない。


 そこで女は診察室のドアをノックする。

 ドアは開かずに、もうしばらくおまちください、と声だけが返って来た。

 なので、女は大人しく待つ。


 それから、十分ほど待って女は、もう一度ドアをノックする。

 今度は返事もない。

 女はおかしいと思い仕方なく受付に行く。

 けれども、そこには誰もいない。


 女は、ここにきておかしいことに気づく。

 人が自分しかいないのだ。

 他の患者も医者も看護師も、誰もいないのだ。


 院内は薄暗く大きな柱時計の音だけがカチカチカチと響いている。

 その音しか聞こえない。

 他に何の音も聞こえてこない。

 女は怖くなり病院から出ようとするが、自動ドアが開かない。


 女は仕方なく待合室に戻り、大きな声で、誰かいませんかー、誰かー、と声を上げる。

 返事はない。

 女は常識の範囲内で、院内を歩き回る。

 トイレや廊下、そう言った場所を、ドアが空いている病室なども覗き込んでみたが誰一人としていない。


 女も流石に怖くなりスマホで助けを呼ぼうとするが圏外だった。

 そんなことはないはずなのだが、この病院でスマホが圏外だったことなど今までなかったのだが今は圏外だ。

 女は本格的に院内を歩き回り、上り階段とエレベーターを見るける。

 エレベーターはボタンを押すと反応するがいくら待っても、そのドアが開くことはなかった。


 女は迷いながらも、階段を上り二階へと向かう。

 女が階段を登り終えたとき、そこは病院だった。

 病院の階段を上がったのだから病院に着く、当たり前だが違う。


 階段を上がり切った先も同じく病院の、今まで女がいた病院の一階だったのだ。


 病院の一階で人が多く行きかっている。

 待合室には数人の患者が待っており、看護師がせわしなく書類を運んでいる。

 受付にはちゃんと受付係が居て、診察室は今まさに自分の番号を呼んでいる。


 女は驚いて、とりあえず診察室に入ろうとする。

 その少し前に振り返るが、そこには上り階段しかない。

 今しがた自分が上がって来た階段はなかった。


 女は頭をかしげながら診察室に入る。

 待たされて過ぎて寝てしまい、夢でも見ていたのだろうと。






まちあいしつ【完】

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