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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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おおい

 女は小学校の先生だった。

 社会科見学。

 それも女の仕事だった。


 ちょっと奥地にある工場の見学会。

 ただそれだけの話だった。


 そもそも女はそのクラスの担任でもない。

 社会見学へ行くための、補佐役として同行しただけだ。

 だから、帰りのバスの中、生徒が一人増えていてもすぐには気づけなかった。


 バスが出発する時になり点呼をする。

 人数は二十五人。そのはずだったが何度数えても二十六人いる。


 担任の先生を呼び一緒に数えたが二十六人いる。

 名簿を見ながら、一人一人確認していったが、どうしても一人多い。


 おかしい。

 自分はともかく担任の教師はすぐにわかるはずなのに、担任の教師すら呆然として名簿と生徒たちの顔を何度も見直している。


 念のため、他のクラスの生徒達の数も確認してもらった。

 他のクラスはちゃんと全員いる。


 女が補佐したクラスだけ一人多いのだ。


 何度数えても、他の先生が数えても二十六名いる。

 担任の先生が生徒を一人ずつ顔を見て行ったが、どの生徒も自分の生徒だった記憶がある、と担任の先生は言った。


 そこで女は、生徒達に誰が紛れ込んでいるのか聞いてみた。

 そうすると、バスの真ん中くらいの座席に座っている生徒を一斉に指さした。

 その生徒を女は見る。


 確かに学校でよく見かける生徒だ。

 女もそう記憶している。

 だが、名前が思い出せない。

 担任の先生を呼び名前を聞くが、担任の先生も名前を思い出せない。

 

 担任の先生が、生徒に直接名前を聞く。

 そうすると、その生徒はニヤリと笑って、あともうちょっとだったのに、と、そう言い残してその場から忽然と消えた。

 一瞬で目の前から、生徒たちの前から、先生の前から、女の目の前から消えたのだ。


 それで生徒達もパニックになる。

 一旦全員バスから出て外で集まる。


 その時、数えた生徒の人数はちゃんと二十五人だった。

 生徒達になんで紛れ込んでいる生徒が分かったのか聞いてみたら、お弁当を食べるときにお弁当箱に顔を突っ込んで食べていた、と生徒たちは教えてくれた。

 それで異様なクラスメイトがいる、と。

 でも、誰もそいつがクラスメイトと認識できるのだが、名前を思い出せないので不思議に思っていたと、生徒全員がそんなことを言っていた。

 

 それがいつからクラスに紛れ込んでていたのか、わからない。

 今日、この社会科見学からだったのか、それ以前からだったのか。

 それすらも誰もわからない。





おおい【完】

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