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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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あついなか

 休日の暑い中、男は自転車で町中を駆ける。

 汗だくだ。

 炎天下なので当たり前だ。

 強い日差し、蒸し暑い風、そして、清々しいまでの青い空。


 男は汗だくだった。

 何とか昼前に家までたどり着いて、コップに氷を入れ、水を注ぎ一気に飲む。

 全身に冷たい水がしみわたるような感覚を得る。

 それをもう一杯。

 それでも汗は止まらない。

 まるで新しく水分が吸収されてきたので、それも絞り出そうとばかりに汗が噴き出てくる。


 外で日差しが強すぎたせいか、家の中は暗く感じる。

 だが、男にとってそんなことはどうでもいい。

 今はエアコンのスイッチを入れるほうが先だ。


 エアコンの冷たい風を直接浴びる。

 冷たく乾いた風。

 火照った、いや、熱せられた体が、確実に冷やされていく。

 

 もう一杯氷水を飲む。


 冷たく味もない水なのに嫌に美味しく感じる。


 汗で来ていたシャツがびしょびしょになっていることに気づく。

 男は上のシャツとついでにズボンも脱ぐ。


 そして、寝巻代わりのTシャツと半ズボンに着替える。

 大量に汗をかいたせいか、そこで眠気が男を襲う。


 男はそのまま、エアコンの風のある床に転がり、目を閉じる。

 すぐに男はすぐに眠りにつく。


 男が起きると辺りは薄暗かった。

 寝すぎた、と男は目覚めて最初に思う。

 だが、どこかこの薄暗さには違和感がある。

 それは窓を見てすぐに分かった。


 窓の外は眩しいくらい明るいのだ。


 男は慌てて、時計を見るとまだ十四時過ぎだった。

 たしかにだいぶ寝てしまったが、この薄暗さはどこかおかしい。

 外は明るいのに、部屋の中だけ異様に薄暗いのだ。

 夕暮れ時のように薄暗い、仄暗い。


 男はなんだかこの薄暗さが薄気味悪くなる。

 男はエアコンを止め、窓を開ける。

 炎天下の元、熱せられた風が吹き込んでくる。


 そうすると、部屋の中が急に明るくなった。

 ように男には感じられた。


 先ほどまであんなにも薄暗かったのに、今は明るい。

 いや、普段通りに戻ったというべきか。

 変な空気でもこもっていたのかもしれない、男はそう考えて、別の窓も開けて風通りをよくする。

 この暑い中に部屋の空気を入れ替えた。


 それは結果として良かったことなのかもしれない。

 男が薄暗い部屋の中にそのままいたらどうなっていたのか、それはまた別の話なのだから。





あついなか【完】

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