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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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とじてもみえる

 女は精神的に参っていた。

 夜寝るとき、目を閉じると化物が見えるからだ。


 はっきりと見えるわけではない。

 ぼやけて見えるのだ。

 もやもやっとした赤黒い肉塊のような、うねうねと踊るように動く化物が見えるのだ。


 女は夜に床に就く。

 部屋の電気を消し、ベッドに横になり、眼を閉じる。

 そうするといつの日からか赤黒いうねうねと踊るように動く化物が見えるようになった。


 それが何なのか、女にはまったく理解できない。

 目を開けると見えなくなる。

 目を閉じると、暗闇の中にその化物が映りこむのだ。


 真っ暗闇の中でそれが見えるのだ。

 布団を頭からかぶろうとも、電気を着けようとも、眼を閉じればその化物が見えるのだ。

 

 特に襲われるという事もない。

 化物はうねうねと動くだけで女に近づいてくるわけでもない。

 ただ、目を閉じるとその中心にいつもいるのだ。

 それが毎晩、いや、目を閉じると続くのだ。


 たまったものではない。


 女は日に日に睡眠不足とストレスで弱っていく。

 それこそがその化物の目的なのかもしれない、女はそう思うようになった。

 なので、女も色々試すようになる。

 アイスマスをしたり、電気を着けながら寝たり、友人を呼んで一緒に寝てもらったりと。

 だが、それでも化物は目を閉じるといるのだ。


 それで女が辿り着いた先は酒だった。

 寝る前に酒を飲み、酔っ払いそのまま寝てしまう。

 酒にそれほど強くなかった女は、それでぐっすりとは言い難いが寝れるようになる。


 それでも目を閉じると化物が見えるという事実は女を追い詰めていく。

 女も病院へ行き、相談するのだが、まともに取り合ってもらえなかった。

 寺や神社にも行ってお祓いなどもしてみるが効果がない。

 結果として、女は酒に頼るしかなかった。


 それから数カ月がたち、女が精神的に参ってしまった時に行動に出る。

 たまりにたまった鬱憤を化物にぶつける様になる。

 はじめは言葉だけだった。

 化物に罵詈雑言をぶつけるだけだった。

 すぐに物を化物に向かって投げるようになる。

 物を手に持ち、眼を閉じて化物に向かって物を投げる。

 不思議なことに、物を投げると化物が怯む。

 女は数カ月たってやっと化物に干渉できることを知った。


 そこで女は通勤の途中、快速電車が通り過ぎる瞬間に目を閉じて見る。

 目を閉じた後、必ず視界の真ん中に居たはずの化物が、今は目を閉じているので女には見えない電車に引かれて飛ばされていくのが女には見えた。


 その化物がどういった存在なのか女にはわからないが、電車で引き飛ばした以来、化物は女の前に現れなくなった。





とじてもみえる【完】

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