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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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17/908

おやど:01

 寒い時期、とても寒い時期、かなり遅い時間の電車にぎりぎり乗れた。

 最初こそ混んでいたものの、主要な駅を過ぎれば他の乗車客は気が付けばほとんどいなくなっていた。

 

 男は酔っていた。

 ただ泥酔というわけではない。しっかり歩けているし意識もはっきりしている。

 でも空いた座席に座るとすぐに意識を失った。

 外とは違い暖かい電車内の暖気が心地よい眠りに男をいざなった。


 電車の揺れで男が目を覚ます。

 窓から見る景色は真っ黒だ。遠くに点々と明かりが見える。

 今は高架線路でも走っているのだろうか。

 だとしたら大分乗り過ごしてしまったことになる。


 続いて男が車内を見渡す。

 この車両には乗車客は自分だけだ。

 続いて出入り口の電子案内板を見る。

 今は何かしらの広告が映っている。

 しばらく見続けていると、次の駅名を教えてくれる。

 その駅名を見て男の血の気が引いていく。

 かなり乗り過ごしてしまったようだ。時間にして男が降りる駅から一時間程度だ。

 男はスマホを取り出し慌てて時刻を確認する。

 もう既に十二時を過ぎている。

 この時間、まだ上り電車はあったかどうか記憶にない。

 タクシーで家に帰るのと、ビジネスホテルに泊まるの、どっちが安いだろうか、そんなことを考える。

 恐らくさほど変わらない金額だろう。

 それほど乗り過ごしてしまった。

 男は深いため息を吐く。

 幸い今日は週末だ。

 この辺りまで来たことないし、一泊していくのもありだと思うことにした。

 駅に着き電車が止まる。


 男はその駅で降りた。


 また新しい、しかも、かなり大きな駅だ。

 ただ周囲は真っ暗だ。

 真っ暗闇の中に巨大な真新しい駅だけが煌々と光を発して存在している。

 なんとなく男は、これだけ大きな駅を最近建てられるくらいは土地が余っているような場所なのか、と思い当たる。

 海でも近いのか風が少し生臭い。

 冷たい風なのに生臭いのは気味が悪いと思いつつも、男は高所にある駅から下を見下ろす。

 ロータリーはあるようなのでタクシーは捕まりそうだ。

 駅から周りを見渡した感じ泊まれそうな施設はない。

 というか、駅からの光が届く範囲でしか明かりがない。

 本当に暗闇の中に煌々と光る駅があるだけのように思える。

 ついでに、想像していた通りもう上り電車はない。

 男はトイレによってから、乗り過ごした電車賃を払い、改札の外に出た。

 そして階段を降りてロータリーを見て絶望する。

 かなり大きなロータリーが用意されているが、待っているタクシーなど一台もいない。

 まあ、降りる客が居ないような駅で、客を待つタクシーなどいるわけもない。

 男は再び駅の階段を登り駅員に、この辺りで泊まれるような場所はないかと話しかける。

 もしくはタクシーでも呼べないかと。


 駅員は少し困った後、何か思いついたかのように、周辺の地図の場所まで行き、とある場所を指し示した。

 そこに民泊があるらしい。

 知り合いなので、今から泊まれるか確認してやる、と、駅員が言ってくれた。

 その駅員が駅員室に戻り電話で確認してくれる。

 しばらく駅員が電話越しに話した後、笑顔でOKマークを手で作って知らせてくれた。


 その後、簡易的な地図とその民宿の電話番号と住所が書かれたメモを手渡される。

 さらに、もう食事はでないし、風呂も使えないが一泊三千円で、という話だった。

 思ったり安いし、食事はもういらない。

 風呂に入れないのは少し嫌だったが、まあ、こんな時間ではあるし仕方がない。

 何より思っていたより安い。

 男は駅員にお礼を言ってその駅を後にした。


 駅のロータリー周辺はもうしまってはいるが店舗などかあった。そこから少し歩くと周囲は森で家がポツポツとあるくらいだった。

 やはり冬なのに風が生臭く湿り気がある。

 少し気味が悪い。

 とはいえ、確かにこの辺りは海が近かったはずなのでそのせいなのだろうが。

 駅員から手渡されたメモ書きの地図と、住所を入力したスマホのナビを頼りにその民宿を探す。

 

 たどり着いた場所は、ただの一軒家に見えた。

 男は、本当にここで合ってるか不安になったが他に行く場所もない、その家のチャイムを鳴らす。

 すぐに扉があき、中年の女性が笑顔で手招きしてくれた。





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