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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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しばんむし

 最近、男の部屋で虫を見る。

 死番虫だ。

 茶色く、小さい、甲虫だ。


 たしかに、この家は古い家だ。

 先祖代々受け継いだ古い家だ。

 虫が湧くのも分かる話だ。


 だが、少し離しは変わってくる。男が使っている部屋だけに虫が妙に湧くのだ。


 なにか餌になるような物はないはずなのに、男の部屋にだけ死番虫が湧く。

 いくら掃除をしても、次の日になれば虫が湧いている。

 男は首をかしげる。

 仕方なく燻煙式の殺虫剤を使うが、それでも次の日にはもういるのだ。


 どこからともなく現れる。

 そして、動き回る。

 床に、壁にと動き回る。


 結局、どこから湧いてくるのかわからない。

 男は死番虫のことを調べる。

 名前の由来は死神の時計が刻むような音を発することからと言われている。

 また、乾燥食品によく湧くという事も分かった。


 男の部屋以外には死番虫を見かけることはない。

 だから、ここに何かがあるはずだ、と男は自分の部屋を徹底的に掃除することにした。

 部屋の物を全てだし、部屋を掃除していく。

 そこで気づく。

 箪笥の裏の壁に小さな穴がありそこから、死番虫が出てきていることに。

 死番虫の巣でもあるのか、そう思った男は穴の中を覗く。


 中は暗く何があるのかよくわからない。

 ただカサカサと何かが蠢く音とカチカチと時計の秒針のような音が聞こえてくる。

 相当な量の死番虫がいるようだ。


 ここまでやったのなら、と男は業者を呼び壁紙を剥がし、壁の一部を剥がしてもらう。

 そして、出て来たのはミイラ化した人間の死体だった。

 男は驚いて、そのミイラ化した死体を餌にしていた死番虫に吐きそうになる。

 

 まさか壁の中にこんなものが埋まっているとは男も知らなかった。

 警察が調べた結果、それはかなり昔の、それこそ戦前の物だという事がわかった。


 少なくとも男には事件性は無いという事で余り大事にはならなかった。

 それでも男は、この先祖代々受け継いできた家に住み続けるかどうか迷いはする。




 

しばんむし【完】

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