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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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おどりばのかがみ

 とある学校の階段の踊り場に大きな姿見、鏡がある。

 全身が映し出されるほど、足から頭まで全部が映されるほど大きな鏡だ。


 少女は部活の帰りで遅くなっていた。

 もう校内の電気もすべて消え真っ暗だ。


 少女は部活を終え、自分の席に置いてある荷物を取りに教室へと戻り、そして、昇降口を目指す。


 その際、階段の踊り場にある鏡の前を通る。

 そこで、少女はハッとなる。


 自分が降りて来た階段の上に誰かの足が見えたのだ。


 少女は振り返る。

 だが、階段の上には誰もいない。

 いや、そもそも暗くてまともに見えやしない。

 もし仮に誰かいたとしても、暗がりで見えるわけがないのだ。


 少女はもう一度鏡を見る。

 明かりもなく、ほとんどまっくら闇の中で非常灯の光のみを反射している鏡を見る。


 鏡の中には自分以外、誰も居ない。

 むしろ暗くて何も見えないと言ったほうがいい。


 少女は見間違いだった、とそう思った。

 その時だ、誰かが少女の肩を掴む。


 もう一度言うが、鏡の中には少女以外は誰もいない。


 流石に暗がりだからと言って、鏡の前に立つ自分の真後ろくらいは見ることができる。

 だが、少女の後には誰も鏡に映っていない。

 なのに、少女は肩を掴まれたのだ。


 少女は恐る恐る掴まれた方を見る。

 手だ。白い手が見える。


 暗闇の中なのに、白い手が、少し、ぼんやりと光って見える。


 けど、少女はそれ以上振り返ることが出来ない。

 首が動かない。

 いや、体全体がまるで言うことを聞かない。


 全身の筋肉が強張り、動くことを拒否しているかのように、震えることはできても、それ以上少女は動くことが出来ない。


 少女は眼だけを動かし鏡を見る。

 今度は自分以外を見ることが出来た。


 少女と同じくらいの背丈、同じ制服を着た女生徒だ。

 青白い顔をした女生徒が少女の肩を掴み、恨めしそうに少女を見ている。


 少女はその女生徒に見覚えもない。

 少女は声を上げようとしたが、震え声になり声もまともに出ない。


 その女生徒が少女の耳に顔を近づける。

 異様に生臭く、氷のように冷たい息が少女にかかる。


 女生徒が何か言おうとした瞬間だ。


 どたばたと階段を降りる音が聞こえてくる。

 そうして部活の先輩が階段を少し乱暴に降りて来た。


 いつの間にかに、女生徒は消えていて、少女も体が動く様になっていた。

 少女はその先輩に感謝して、姿見の前から逃げ出した。


 少女がその先輩に姿見の前で起きたことを話したが、そんな噂聞いたこともない、と笑い飛ばされた。

 ただ、今は使われてないが姿見がある上の階のトイレで自殺した女生徒はいる、という話だ。





おどりばのかがみ【完】

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