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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ゆかのした

 家の中で歩くたびに、ギギギッとなる床がある。

 一階のリビング、その部屋の隅。


 そこの床に乗るたびに、ギギギッと音がする。


 男は不振に思いつつも、それに対して特に何もしてこなかった。

 まあ、音が床がきしみ音が鳴るだけだ。


 大した問題ではない。


 だが、ある日、男がその場所に乗ると床板が割れる。

 音が鳴っていたし、腐っていたのか、と、男は思った。

 確かに腐ってはいたのかもしれない。


 が、その床の下から戸が出来てきたのだ。

 ぱっと見は床下収納の戸だ。


 この家は中古の家をリフォームされたものを買ったものだ。

 こういった物があっても不思議ではない。


 それに床下収納の戸から、冷たく湿っぽい空気が漏れ出ている。

 これのせいで床板が腐ってしまったのかもしれない。

 ならば、この床下収納をどうにかしないと床板を張り替えても、また同じことの繰り返しかもしれない。

 

 とりあえず男は床下収納の戸を開ける。


 出てきたものは、普通の床下収納だ。

 プラスチックの元は白かっただろう、今は黄色く黄ばんだ何も入っていない籠がぶら下がっている。


 男はその籠を取ろうとする。

 かなり風化しているのか、ボロボロと崩れれる。

 それでも何とか、男がその籠を取ると、その下には四角い穴が続いていた。

 暗く、深い、穴が。


 なんだこりゃ、と男は思った。

 その穴から、生臭く湿った冷たい空気が漏れ出ている。


 男は顔を顰める。


 とりあえず懐中電灯を持って来て、そこを照らしてみる。

 そうすると底の方にキラキラと輝く何かが見える。


 底の方に水が溜まっているかのようだ。


 井戸? と男は思った。

 だが、井戸の上に床下収納とは全く意味が分からない。


 降りるにしても、その穴は狭すぎる。

 色々と危険だ。


 男はその場所に椅子を置いて、穴に誰も落ちないようにして、家族にも近寄らないように注意した。

 そして、業者を呼んだ。


 調べてみた貰った結果、何らかの井戸だろうとのことだ。

 業者にもなぜ井戸の上に床下収納があったのかはわからない、とのことだ。

 男は井戸を埋めるように業者に頼んだ。


 頼まれた業者はあからさまに嫌な顔をした。

 そして、男に告げる。


 恐らくこれは、何らかのいわくつきの井戸だ。

 だから、埋めずに残してある。

 埋めたらきっと何か起こる、と。


 だが、男としてはこのままにしておけない。

 大人は大きさ的に穴に落ちはしないが、子供ならすっぽりと落ちてしまう。

 男からしたら危険極まりない穴なのだ。


 男は業者に頼み込んで、この井戸だか穴だかを埋めてもらうことにした。

 後日、業者が神主のような男を連れてきて、祝詞を上げ、井戸に酒を流し込んだ後、一本の息抜きと呼ばれるパイプを刺して、その井戸は埋められた。


 それからだ、床下の息抜きのパイプから、呻くような声が聞こえ始めたのは。


 業者が言うにはガスが漏れだす音だそうだが、どうしても人が呻いているような声に、男には聞こえてならない。

 ただ、それだけで何か別の心霊現象のようなことが起こったわけではない。


 でも、確かに聞こえるのだ。

 人の呻くような、そんな声だか音だかが。




ゆかのした【完】

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