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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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あまいみず

 とある県と県の境にある山のふもとに湧水が湧く場所がある。

 一応は人が飲めるよう造られたかどうかはわからないが、塩ビのパイプが用意されており、そこから水がとめどなく流れ出ている。

 備え付けの木のコップなども置かれている。


 あまり知られていない湧水で、そこらか湧く水は甘いと言うのだ。


 あまりにも甘いので変なものでも混じっているか、と検査されたこともあるくらいだ。

 その結果、普通の湧き水の成分は特に変わったところはなく、それも普通の軟水という話だ。

 なぜ甘いのか、それはその検査ではわからなかった。


 ただ、確かにその湧水は甘く感じるのは事実だ。


 おかしなことにその場で飲むと確かに甘いのだが、それを汲んで持って帰って飲んでも甘くはないのだという。

 なにか揮発性の成分で甘く感じているのかもしれない。


 そんな湧き水がある。


 地元の人がたまに立ち寄り、一杯だけ飲んでいく。

 そんな場所だった。


 その付近に引っ越してきた一家がいた。

 あまり良い一家ではないのか、そこの家の子供は所謂、放置子という奴だった。


 最初の頃こそ、友達の家に入り浸っていたが、一年もするとその子は一人でいる様になっていた。

 そして、その子が行きついたのが、この湧水の場所だった。


 その子は湧水を、甘い湧水を飲んだ。

 ガブガブと飲んだ。

 それを見た近所の老人達は、そんなに飲むと腹を壊すと注意するのだが、その子はそんな話を聞くわけもない。

 それどころか、その子はこの湧水はすべて自分の物だと言わんばかりに、他の人間がそこに近づくと威嚇するようにまでなっていた。


 そんなことになってから、三か月後くらいだろうか。

 その子が湧水の場所で倒れているのが発見された。


 すぐ病院に運ばれたが、その少年は衰弱し、腹だけが異様に膨れていたという。

 なんでも、その子の腹の中は大量の寄生虫がいたという話だ。


 その子が助かったかどうかって?

 申し訳ないがそれは聞いていないので知らない。

 すぐにその一家はまた別の場所へと引っ越して行ってしまったそうだ。


 恐らくその湧水が寄生虫の原因ではない。

 湧水でできた池にいた小さなエビやカニなどを食べたせいではないかと言われている。


 ただそれ以来、その湧水を飲む者は減ったことだけは事実だ。



あまいみず【完】

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