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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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たいちょう

 男は体調が悪かった。

 目の奥が重くいたく、体がだるく、肩が重い。

 体の節々にも痛みを感じる。

 気を抜くと鼻水もたれてくる。

 食欲もない。

 無理に食べると吐きそうになる。


 風邪を引いたか。

 

 男はそう思っていた。

 丁度良いのか悪いのか、明日は休日だし一日寝ることに男はした。

 

 男は家に帰り、布団を敷いて横になる。

 うなされながらも横になっても具合が悪く寝付くことが出来ない。

 これは本格的に風邪を引いてしまった、と、男は明日もこの調子なら病院へ行かなくては、と考えていた。

 また休日に近くの病院はやっていたかと、思い返すが思い出せない。

 それも、明日起きてから考えればいいと、男は眼を強くつぶる。


 やがて男は気を失うように眠りにつく。


 そして、真夜中に目を覚ます。

 汗で布団が湿っている。

 大分汗をかいたようだ。

 そのおかげか大分体が軽く感じる。

 

 水が欲しい、と男が思い目を開けると、枕元に誰かが座っている。

 正座して座っている誰かがいる。

 男は一人暮らしなのに。


 その誰かは黒い和服を着た中年の女性で顔を黒い布で隠している。


 男は驚くが声も出ないし、身を起こすことも出来なかった。

 

 男はなんとなく理解する。

 これは死神だと。

 自分を迎えに来たのだと。

 今か今かと死ぬのを待っているのだと。


 男は死んでたまるかと、何とか身を起こそうとする。

 体に力が入らなくて身を起こすことがまるでできない。

 どうせ死ぬなら何か言ってやろうと、声を出そうにも喉がカラカラで声が上手く出ない。


 そうしていると、女が動く手を差し伸べる様に、男に向けて来る。

 その手を見て男はギョッとする。

 骨だ。

 骨しかない。

 男に差し伸べられた手は骨だけしかない。

 男はいよいよ死ぬときが来たと思い観念する。


 骨の手が男に伸び、口のあたりの何かをひょいっと掴む。

 そして、それを持ち上げる。


 男の中から何かが引っ張られる様な感覚が、体の中に絡みついている何かが引きづり出される様な感覚に襲われる。

 魂でも引き剥がすのか、と男が思ったが、骨の手が引きずり出したのは黒い靄だった。

 それが男の体から出た瞬間、男は急に楽になる。


 骨女はその黒い靄を自分の顔の付近に持っていき、黒い布を捲りそれをぱくりと一口で食べた。

 その顔はやはり髑髏だった。骨しかなかった。


 骨女は黒い靄を飲み込むと、立ち上がり、そのまま床へと沈んでいった。


 男は茫然とそれを見ていた。

 体もう動く。それどころかあれ程ひどい風邪が治っていた。


 よくわからないが、あの骨女が病魔か何かを取り除いてくれたのだろうと、男は思った。

 理由も何もわからないが、とりあえず助かったのだと、それだけは理解できた。




たいちょう【完】

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