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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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にらみあい

 男は困っていた。

 恐怖もしている。

 焦ってもいる。

 だが、動けなかった。

 男は会社で作業をしていて、ふと視線を感じて見上げたら、壁に顔があった。


 青白い無表情な、お面のような顔で、男をじっと見降ろしていた。


 天井に近い場所の、壁の高い位置に、その顔はあって男を見降ろしていた。


 男はその顔を視線が合ったとき固まった。

 金縛りという奴ではない。

 ただ単に驚きでだ。

 けれども、視線を外してはいけない、そんな気が男はしてしまったのだ。


 だから、男は壁の顔を睨み返した。

 そうしなければ、やられる、そう思えたからだ。


 けれど、相手は無表情な顔だ。

 お面のような表情が一切ない顔だ。


 いくら男が睨み返しても何一つリアクションがない。


 男は困っていた。

 恐怖もしている。

 焦ってもいる。


 目が疲れ、瞬きをしたくなる。

 瞬きをした瞬間襲われるのではないか、そんな妄執に男は囚われていて、瞬きさえできない。


 そんな時、男の上司が男に声をかける。

 どうした、そんなぼぉっとして、と。

 男は手招きで上司を呼びよせて、壁の顔を指さす。

 上司も動きを止める。


 あの顔は男だけに見えるというわけではないようだ。


 男は上司に確認を込めて、見えます? と問う。

 上司は無言で、それでも視線を壁の顔から外さずに頷いた。


 恐らくだが上司も視線を外せなくなったのだろう。


 少しして、男の後輩がその場所を通り、男と上司が見上げているものを見る。

 後輩も顔を見上げたまま固まる。


 男が上司と後輩に、もう限界だから瞬きする、と宣言する。

 上司と後輩は男を止める。

 絶対襲われるから、と。


 だが、男の目は限界だった。


 男は目を閉じて瞬きをする。

 目を開くと、そこに壁の顔はもうなかった。

 瞬きをした一瞬のうちに消えていた。


 上司と後輩の話では壁に沈むように消えていったらしい。


 顔の正体はわからない。

 それ以降、残業は少なくなり、上司と後輩とはなんだか仲良くなった。

 ただそれだけの話だ。


にらみあい【完】

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