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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ふるほんや

 今よりも昔、スマホなどがまだない時代の話だそうだ。

 当たり前だが電子書籍などもない。


 紙の本しかない。


 ついでに少年のお小遣いも少ない。

 だから、欲しい漫画を求めて少年は古本屋を自転車で探して周る。

 まだ町に本屋も古本屋もたくさんあったころの話だ。


 少年は少々遠出をしていた。

 暑い中、必死に自転車を漕ぎ、お目当ての漫画を探して、掘り出し物の漫画を求めて、古本屋を廻る。

 そうしている間に、少し遠出になっていた。

 いつも行かないようなところまで来ていた。


 でも、そこで新しい古本屋を見つけることができた。

 雑居ビルの一階をすべて借り切った大きな古本屋だ。


 ただ電気がついていない。

 冷房はついている。


 外は強い日差しで暑いが、中は寒いくらいひんやりしている。

 外からの光だけで、店内には蛍光灯の一つもない。

 そんな古本屋だ。


 少年は店の前に自転車を止めて店に入る。

 少し汗ばんでいたので、店内は涼しく心地よい。


 レジに店員はいない。

 店内を見回っている感じでもない。

 それらのことは古本屋出はそれほど珍しくないことなので、少年は気にしなかった。

 漫画の棚を端からは端まで必死に見て回る。


 しかし、棚に並んでいる漫画はどれも少年が知らないような古い漫画ばかりだ。


 ふと少年は視線に気づく。

 見られているのがわかるほどの視線だ。


 視線のほうをむくと、レジに老人が立っている。

 老人が無表情に少年を見て居る。


 少年は老人に向かい軽く会釈をする。

 そして、再び漫画の棚を見て回る。


 だが、やはり古い漫画ばかりだ。

 棚に並んでいる漫画の量は多いのに、本当に古い漫画ばかりだ。


 少年は落胆し、古本屋を出ようとする。

 すると老人が話しかけてくる。

 買わんのか? と老人はやはり無表情で聞いてくる。

 少年は、古い漫画ばかりで目当ての物がない、と答える。

 老人んは、そうか、とだけ答えた。

 そして、ここは初めてか? と聞いて来るので少年は無言で頷いた。


 なら特別にこれをやろう、と一冊の本を手渡される。

 それはどうも怖い話の本のようだ。

 少なくとも漫画ではない。

 でもただでなら、と少年はその本を受け取り老人に礼を言ってから、店を出ようとした。


 その時、少年は肩を掴まれる。

 振り向くと、そこには中年の男性が怖い顔をして立っていた。

 

 中年の男性は、その本どうした、と怒った表情で聞いてくる。

 少年は素直に、レジのところにいた老人が初めてだから特別にくれた、と言ってその本を見せる。


 そうすると中年男性は驚いた表情を見せる。

 その後老人の特徴を何度か聞かれ、中年男性は納得した顔を見せる。

 中年男性の話では、はじめは少年のことを万引きだと思っていたようだ。

 ただ、老人の話と少年の持っていた本を見て、その老人は前のここの店主だと、中年男性の父だという話だ。

 ついでにその人物はもう数年前に死んでいる。


 少年の貰ったその怖い本は、生前その老人が大好きだった本で、確かに初めてここを訪れ、気に入った子にしょっちゅうあげていた本だということだ。

 ついでに本の内容は結構怖いらしく、そのまま二度と来なくなることの方が多いとの話だ。


 そんな話を少年は中年男性から聞いた。

 そして、引き留めて悪かった、その本は持って言ってくれ、まだ配るように用意してある在庫がたんまりあるんだ、と中年男性は言って笑った。


 少年がその本を持って帰り、家で読むとたしかにとても怖い内容だった。

 夜寝れなくなるくらいには。




ふるほんや【完】

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