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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ものおき

 休日に物置の掃除をした。

 古い家の古い大きな物置だ。

 何がしまってあるか持ち主の男でもよくわからないほどだ。


 手前の方はまだわかる。

 季節外の服だったりと、なにかと出し入れがあるからだ。


 だけれども、少し奥へ行くともうわからない。

 暗く蒸し暑く雑多でごちゃごちゃしていてよくわからない。

 懐中電灯でも持ち込まないと暗くまともに見れもしない。


 男が奥の方を懐中電灯で照らすと、段ボールどころか、いつからしまっているのかもわからないようなくすんだ木箱まである。


 が、それどころではない。

 床に小さなものが大量に転がっている。

 細長く茶色い塊だ。

 恐らくは鼠のふんだろう。


 男はそれを見て顔を歪ませる。

 鼠用の罠でも買わないと、と考える。


 ホウキを持って来てそれを履き、掃除を始める。


 どこから入り込んだ、と思うが、古い物置だ、鼠の侵入口などいくらでもあるだろう。

 けど、鼠が齧るような物は流石に物置には入れていない。

 

 何を食って鼠たちはこれほど、鼠共はふんをしたのだと、男は考えるが思い当たる物はない。


 ただ巣としてだけ使っていていて、ここでは何か食べているわけではないのかもしれない。

 だが、それにしてはふんの量が異様に多い。


 男は鼠共のふんを集めては塵取りに入れて、それを外へと捨てに行った。

 なんどもなんども。


 物置の奥の床にはいたるところに鼠のふんが散乱している。

 いくら何でもでも、この量はおかしい、と男も考える。


 やはり物置のどこかに鼠共が齧るようなものがあるのだろう。

 男はそれを探すが、やはりそんなものは存在しない。

 そもそも物置の床にはなにも物は置かれていない。

 すべて棚の上に置かれいて、流石に棚の上まで鼠が登った様子もない。

 男は首をかしげるばかりだ。


 これも物置の掃除は掃除なのだが、これでは本来の掃除、物置の整理は一向に進まない。


 男はとりあえず鼠共のふんだけは掃除して、ホームセンターで鼠用の毒餌を買ってきた。

 それを物置の中へ置いておく。


 次の休みの日だ。


 男はすっかり忘れていたが、物置の様子を見に行く。


 物置の扉を開け見回る。

 ふと見慣れない物が落ちている。


 懐中電灯で照らすとそれは毛の塊のような物だ。

 猫ほどの大きさ、いや、猫よりだいぶ大きい。

 灰色の毛の塊。


 男はそれが大きな鼠だ。とわかったが、それにしては大きすぎる。

 毒餌で仕留められたのか、と男が近寄ると、その灰色の大鼠は急に目にもとまらぬ速度で走り出し、物置の入り口まで走っていった。

 そして、物置の入り口から、振り返り男を見る。


 キィ! と甲高く憎々し気に一鳴きして、外へと走り去っていた。


 ついでに毒餌はすべて食べられていた。

 それ以来、鼠のふんが物置に散らばることはなくなったが、鼠が何を食べていたのか、それは今でも不明だ。




ものおき【完】

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