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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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あまもり

 女は集合住宅の一階に住んでいた。

 かなり古い集合住宅だったが、それでも駅から近くこの辺りは治安も良い。

 そんな住みやすい場所だった。


 数年間住んでいて今までそんなことなかったが、急に寝室に雨漏り、いや、天井から水漏れが起きた。

 夜遅い時間だったが、女はすぐに管理会社に電話をする。


 それほどの水量ではないが、水が垂れてきている。

 上の階で水漏れでも起きたのかもしれない。


 だが、管理会社の担当者は部屋番号を聞いて、電話越しにだが、え? という声を上げる。

 そして、慌てだす。

 もう夜遅い時間なのだが、今から確認へ行くとまで言ってくれた。

 

 申し訳なかったが女にとってはありがたいことだ。


 そして、管理会社の担当者が部屋を訪ねて来る。

 女はそれまでに、バケツやシートを用意して水漏れ対策をしていた。


 担当者は水漏れを見て顔を顰める。

 そして、おかしい、という言葉を口から漏らした。

 担当者の話では、現在この部屋の上の部屋には誰も住んでいない、先ほども確かめてきたが人が住んでいる様子はなく水漏れのしていなかった、という話だ。

 ただ実際に女の部屋は水漏れをしている。

 そう多い水量ではないが、天井から水が今も滴ってくる。

 その水は無色で無臭なので、下水の類ではない。


 それでも気味の良いものではない。

 ただ上の階は、そもそも今は水道も元栓で止めているので水漏れなど起こるはずがないのだという。


 その夜、女は夢を見た。

 寝室の天井に女性の顔がある。

 無表情で青白い女性だ。

 長い髪を天井からぶら下げて、無表情に天井に張り付くように顔だけを見せている。

 そして、その女性の口から涎が、ポツリポツリと垂れてくる。

 女は夢の中で、ああ、あの水漏れはこの女性の涎だったのだと、そう思った。


 次の日、水漏れをしていた部屋に、夢で見た女性の顔が浮かび上がっているた。

 ただ女には何もできることはない。

 天井に人の顔が浮かび上がったところでどうなるわけでもない。


 それから、その日のうちに管理会社から連絡が来る。

 少なくとも上の階で水漏れは起きていない。

 床をはがしてすべてを確認したのだが、水漏れは起きてはいなかったとのことだ。


 ただ水漏れは今も起きている。


 女は管理会社の担当者に、夢の話と人の顔が天井に浮かび上がったことを言って、なんで空き室になっているのか確認する。

 だが、担当者からはただ引っ越しただけで事故物件になったわけではない、と聞かされる。


 その後、担当者が訪ねてきて、天井に浮かび上がった顔を見て、驚いていた。


 なんだかんだで、女は担当者の勧めと紹介で引っ越すことになった。

 駅から少し遠くはなったが新しい部屋だ。

 住み心地は良い。


 ただ今もあの部屋は水漏れが起きているらしい。

 水漏れの成分を検査したしたところ、雨水と酷似しているという話だそうだ。

 だから、集合住宅の一階でも、あれは雨漏りだったのかもしれない。

あまもり【完】

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