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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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おじょうさま

 とある小さな街の外れの御屋敷に、病気がちのお嬢様が住んでいるという噂がある。

 本当かどうか、それは少年たちにはわからない。


 だが、街の外れに大きな御屋敷があることだけは確かだ。

 少年たちは本当にそんな人物が住んでいるのか、それを確かめるためにお屋敷まで行く。

 本当に大きなお屋敷だ。

 

 お屋敷と言っても洋風の御屋敷ではない。

 和風の御屋敷だ。

 木造の平屋で昔ながらの、和風の御屋敷だ。

 それでも外壁は白い漆喰の外壁があるような、そんなお屋敷だ。


 お屋敷の大きな戸は開いていた。

 少年たちはそこからお屋敷の中の様子を見る。

 外の漆喰の壁とは違い、中は普通だった。

 広くはあるが、よくある農家の家のような、そんな感じだ。

 ただその敷地は広い。

 池なども垣間見えるから、やはり普通の農家ではないのだろう。


 少年たちがもう少し物を知っていれば、元々は地主の家だったとわかるだろうか。

 ただ今は広い敷地を持つだけの普通の家だ。


 少年たちが大きな門、それこそお寺なんかでしか見たことのないような、そんな門からそのお屋敷を覗き込んでいると、独りのみなりの良い老婆がそれに気づく。

 老婆は何事かと思い少年たちに声をかける。


 声をかけられた少年たちは、噂で病気がちのお嬢様が住んでいると聞いたから見に来たと、正直に言った。

 老婆は驚く。


 まだそんな噂があるのかと。


 老婆は少年らをお屋敷に招き入れ、お茶と茶菓子を出して話し出す。


 たしかに病弱な女の子はいた。

 けど、その女の子は無事に育ち、大人になり結婚し、子供を産んで孫にまで恵まれたんだよ、と話す。

 そして最後に、何を隠そう、その噂は私のこと、と、そう言ってほほ笑んだ。

 その後もしばらく少年たちは老婆と話していた。


 夕暮れになる頃だろうか、そのお屋敷に住むまだ学生の青年が帰ってくる。

 誰もいないはずの家の居間に少年たちがいて、お茶までいれていたので、何事かと青年は思った。

 少年らから話を聞くと、老婆がもてなしてくれたというのだ。


 その老婆の特徴を聞いて青年は心当たりがある。

 三年前に亡くなった祖母の特徴と同じだ。


 青年は少年たちの話を信じた。

 なぜならば少年たちが話している内容は、この家の者しか知りえない話ばかりだったからだ。


 青年は少年達をもてなした後、仏壇に線香をあげ、茶と茶菓子を供えておいた。


 ただそれだけの話だ。




おじょうさま【完】

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