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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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となりのもり:01

 とあるアパートの隣にちょっとした森がある。

 一番地ぐらいの地区をフェンスで囲みは入れないようにした森が住宅地にある。

 確かに大通りからは少し外れており、利便性もなくただ単に開発されずに残った土地、そう見えなくもない。


 そんなちょっとした森を電気もつけずに、酒を飲みながらとある夏の夜に智治は眺めていた。

 智治の部屋は二階の角部屋であり、他の部屋についていない側面にも窓がある。

 その窓から見えるのは隣の森だけであるが、智治はたまにその森を肴にして酒を飲むことがある。

 道に面したところは街頭で明るいが、その奥はただ暗く深く何も見えない森なのだが、不思議と惹かれるものがあり、智治はたまにそうしていた。

 特に森に動きがあるわけではない。

 鳥すら滅多に居なく本当になにかあるわけではないが、この辺りでもこれだけまとまった自然を見れる場所はそうそうない。

 恐らくあのフェンスの中は足の踏み場もないほど木がうっそうと茂っているのだというのが周りから見ただけでもわかる。

 手入れも何もされていないちょっとした小さい森。

 都会に取り残された自然。

 それを見ながら飲む酒も、そう悪いもんじゃない。智治はそう思っていた。

 智治はちょうど酒を切らし、明日は休みだしもう少し飲み足そう、そう思って新しく酒を取りに行った。

 明かりは月明かりだけだ。

 少々酒も回っている。

 それでも智治は鼻歌交じりに酒瓶を取りに台所へと向かう。

 飲みかけの焼酎を探し出し、それを手に取り隣の森が見える窓の前の机に着く。

 硝子のグラスに酒を注ぎ、そして、とりあえず森を見る。

 そこで森に今まで見たことがないような事が起きていた。


 子供だ。

 小さな子供が森にいる。

 森を囲むフェンスの中にいる。

 街灯に照らされたその子供は異様に白く見えた。

 その子供は、フェンスに手をかけ、そのフェンスの強度を確かめるように何度か揺らした。

 そして、しばらくすると何事もなかったかのように森の中へと帰っていった。

 智治はそれをなんとなく無言で、何も考えずにひっそりと見ていた。

 そして、今の時刻を確認する。

 午後九時を優に回っている。

 少なくとも先ほどの子供が森の中に居ていい時間ではない。

 ただ酔っていた智治は、なんとなく関わらないほうが良い、とその時は判断し、その晩は見なかったことにした。

 智治にはその子供がどうしても普通の子供には思えなかったからだ。


 翌日、目を覚ました智治は、なんとなくそのフェンスに囲まれた森の周りを見て歩いた。

 もし昨晩見た子供が見間違いや幽霊の類などではなく、森に迷い込んでしまった普通の子供だったら、そう思い直したからだ。

 まずフェンスを構成する格子の穴は小さく子供でも足を掛けて登れるような作りのものではないことがわかった。

 この中に入るなら、どこか入口があるか、梯子か何かなければ入ることなどできなさそうであることもわかった。

 そして、一番大きな通りに面した場所にフェンスでできている入口を発見する。

 そこにはダイアル錠がかけられており、看板もあった。

 看板に書かれている管理者の名前と電話番号に智治は覚えがあった。


 自分が住んでいるアパートの管理人だ。


 どうするか迷いはしたが、子供を見たことは事実であり、もしその子供が出れずに助けを求めているのであるとしたら、そう考えると智治は動くしかなかった。

 アパートの管理人に電話で連絡をする。

 そして、昨晩フェンスの中に子供がいたことを告げる。

 そうすると、電話の向こう側から、

「なんだってぇ!」

 と、驚く様な大きな声が返って来た。






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